第262幕
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「3D映像でも映画でもねぇ……じゃあこの世界は一体何だ……」
墓場から街中……だったはずの場所へとフラフラと歩いてきた。どこを見ても銀時の知っている街並みの面影は無い。そこにあるのは打ち捨てられた建物と路地裏に住む浮浪者。
「紛れもない現実です。いや、現実では少し語弊がありますね。銀時様、貴方にとってはいずれ来るべき現実と言った方がよろしいでしょうか」
「おっ……お前喋れたの!?えっちょっと何!?てっきり魔女宅のパン屋の親父みたいなジェスチャーキャラでいくのかと思ったら突然何わけのわからねぇこと喋りだしてんの!?」
ずっと銀時の後をついてきた映画泥棒が突然流暢に話し始めて目を丸くする。ビデオカメラが頭にくっ付いているからてっきり話せないもんだと思っていたのに。
驚く銀時に映画泥棒は落ち着いた声で話を続ける。
「銀時様、残念ながら私は映画泥棒でも、おそのさんの旦那さんでもありません。私はあなたをこの世界に呼び出すためにある方に作られた……時空間転送装置。通称、時間泥棒。要するにタイムマシンです」
喋りだしただけでも驚きなのにその上でまた訳の分からないことを言い始めている。映画泥棒じゃなくて時間泥棒?結局泥棒には変わりないんじゃないか。今どきタイムマシンなんて流行らない。今の流行は転生ものだ。車に轢かれて異世界へと旅立つ。転生した先ではチート能力が与えられ数多の試練を乗り越えてハッピーエンド。昨今の漫画や小説はこれが主流とも言える。
だからタイムマシンなんてものは古い。そんなのあの青い猫型ロボットしか使わないだろう。
「つまりこの世界はあなたが先程までいた世界の五年後の姿。いずれあなたが……世界が辿る全てが終わった未来の姿です」
「こ、ここが……五年後の世界?全てが終わった俺達の未来?」
違う。そんなわけない。そう思いたくても目の前のやつは淡々と言葉を続ける。無感情に聞こえるその声はただ真実を語っているかのように。
「驚きになられるのも無理はありません。でもあなただけではないのです。この通り世界はすっかり荒廃し今や見る影もありません。総人口の三割は死に絶え、四割は別の星へ移り住み、この地球は完全に捨てられた星になってしまいました。あの方はそんな世界を変えるためにあなたをこの時代へ呼び出したのです」
「あの方って誰だよ。俺達の世界に一体何が起こったって言うんだよ!」
とりあえずこの世界がとんでもない事になっているということは飲み込めた。地球が捨てられた星になっているなんて信じられるはずもないが、周りの状況を見たら信じざるを得ない。
五年後の世界では一体何が起きているのか。人口の三割が死んだと時間泥棒は言った。それじゃあこの時代の万事屋はどうなっているのか。
「おいっ!あいつは……海は生きてるのか!?」
時間泥棒の胸ぐらを掴んで強く揺する。
「まさか……死んだとか言わねぇだろうな!おい、どうなんだ!」
ガクガクと揺すり続けていると時間泥棒の頭がスポッと抜けて地面を転がっていく。そしてたまたま通りかかったバイクに轢かれて壊れた。
「どうやら私の役目はこれまでのようです」
「ええー!?ちょっと待て役目って何?今んとこ人を勝手にこんな所連れてきて勝手にぶっ壊れただけだけど!?てか、質問に答えろよ!!」
力を失った身体はグラりと傾く。地面にそのまま叩きつけられたら完全に壊れてしまいそうだ。慌ててその身体を支えると、時間泥棒は銀時の額に黒い装置をくっ付けた。
「くれぐれも自分の素性を知られてはいけませんよ。まずは源外様をお捜しください。力になってくれるはず」
額に付けられたハナクソ……黒い装置を外そうとしてみたがどういう原理か外れる気配は無い。
時間泥棒は不穏な言葉を残してプツリと電源が落ちた。
その場にたった一人残された銀時は絶望に嘆きながら辺り集まってきた謎のバイク集団に囲まれていくのをただ眺めた。
.