第271幕
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「海、ぬし泊まるところはあるのか」
『一応な。寝るくらいであれば問題ない』
「食事はとれておるのか」
『それも心配ない。万事屋の下で食ってる』
「その……何か必要なものがあったら言ってくれ。柳生家で手配しよう」
『必要ない。それくらい自分でなんとかする』
病院を出ると、海は月詠と柳生に左右から質問攻めにされていた。あれやこれやと海を気遣っている言葉だらけなのだが、言われている当人は無表情で……いや、少しだけうんざりとした顔で答えている。
「なにあれ」
「しょうがないわよ。海が江戸に戻ってきたのは久しぶりだから。ツッキーたちその間すごく心配してたの」
「そりゃわかるけどよ。でも、あれじゃまるで上京した息子が実家に帰ってきたみたいな感じじゃねぇか。あいつらあんなに母性に溢れてたっけ?」
「似たようなものでしょ」
あれは必要か。これは持っているかと左右から言われ続けている海は段々と不機嫌さをかもしだす。
『しつこい。人のことより自分のことを心配してろ』
表情には出さないが、声色が明らかに怒っている。漸くそこで柳生と月詠は気づき、気まずそうに目を逸らした。
『猿飛、お前に少し聞きたいことがある』
「何よ。銀さんのことなら何も言うことは無いわよ」
『そっちじゃない。最近、新手の忍びを見た。お前らのところのやつか?』
「新手の忍び?さあ……私の所の者ではないのは確かね」
『そうか。なら幕府の方で用意したやつらか』
「まさか貴方……」
『お前らのところのじゃないのであればいい』
猿飛に確認だけして海は銀時の方へと戻ってくる。
「ちょっと待ちなさい!もしかして忍びに狙われてるの!?」
『帰るぞ。もう疲れた』
「いいの?なんか騒いでるけど」
『あいつらの相手をしてたら夜中になる』
放っておけと言って海は歩き出す。その後を新八と神楽が追っていき、銀時も月詠たちの方をチラッと一瞥してから歩き出した。
「海、さっきの忍びの話ってなにアルか?私たちは聞いてないネ」
『言ってなかったか。お前たちも気をつけた方がいい。どうやら幕府は忍びを手駒にしているみたいだからな。御庭番のやつらが把握してないってことは秘密裏に雇った者だろう』
「それって……海を捕らえるためにってことアルか?」
『それしかないだろ。今更治安維持を考えるとは思えない』
考え込み始めた神楽と新八を横目に海は定春と戯れる。
狙われているのは海なのに、その本人は何も気にしていない。周りの人間が気を揉んでいる状況に銀時はため息を漏らしたくなった。
「てか、なんで海さんはいつも事後報告なんですか!」
『しょうがないだろ。忍びが雇われてるなんて知らなかったんだから』
「言うのが遅いんですよ!どうせ襲われたのだって昨日今日の話じゃないでしょう!?」
『まあ……そうだな』
「そうだな、じゃないです!!そういうことは早く言ってください!」
「そうだヨ!また襲われたらどうするネ!」
『そのときは一人残らず捕まえる。猿飛たちの仲間じゃないのがわかったから、やり返しても大丈夫なはず』
「「大丈夫じゃない!!」」
『ハモらせるな。騒がしい』
傍で聞いていた銀時も二人の叫び声で耳がキーンとなって嫌な顔を浮かべた。
「そんなことより、お前ら"アル"も"ツッコミ"も捨てたんじゃねぇの?」
さっきからなんの違和感もなく二人は言っているが、彼女らは五年の間にアイデンティティを捨て去っていたはずだ。
銀時の問いに神楽と新八は気まずそうにそっぽを向く。
『お前、空気読めないって言われたことないか?』
「無いけど」
思ったことを素直に口にしてしまったなぁとは思うけど、今このタイミングを逃したら言えなくなりそうだから言った。それだけなのに海は呆れた顔で、銀時をじとりとした目で見る。
『それは今言うべき事じゃない』
「でも、こいつらが自分で言ったんだよ?過去の自分とは違うって」
『もういい。ちょっと黙ってろ』
静かにしてろと言われて銀時は押し黙る。三人で固まって何かを話し込んだかと思ったら、神楽たちは互いの顔を見て不機嫌丸出し。そんな二人を落ち着かせようと海が声をかけるも、上手く仲を取り持つことは出来ずに終わった。
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