第271幕
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『盗み聞きとは趣味が悪いな』
「あっ」
固まって動けなくなっていた銀時の真横で海は腕を組んで佇む。話を聞かれて怒っているのかと、おどおどしながら海の方を見る。
「怒って……ないの?」
『別に』
「え」
『それより早く出るぞ。面会時間はとっくに過ぎてる』
「う、うん」
変わらない態度の方が怖く感じる。でも、不機嫌になっている様子は感じられない。本当に気にしてないということなのだろうけど。
「ねぇ、海」
『今度はなんだ』
「その……ごめんね?」
『何が──』
海がこちらを振り向くよりも先に銀時はフードへと手を伸ばす。
軽い力で引っ張れば、海の頭を隠し続けていた布ははらりと剥がれていく。
「……そういう……ことだったんだ」
頭のどこかでそうなんじゃないかと思っていた。海が最初に倒れた時にもしかして、とは思っていたのだ。でも、海は大丈夫だろうと、いつもの疲労で倒れただけなんだろうと思い込むことにした。
この現実を受け入れたくなくて。
「お前……白詛に……」
フードの中から現れた髪は毛先だけが黒く、根元の方が白くなっていた。所々で色が違うのは、きっと白くなってしまった髪を黒く染めているのだろう。
周囲に白詛にかかってしまったことを悟られない為に。
『なら話は早い。やるべき事を早く終わらせろ。俺に時間がないことはわかっただろ』
「このことお妙以外に誰が知ってるんだ」
『なんでそんな事をお前に言わなきゃならない』
「誰が知ってるんだって聞いてるだろうが」
フードを戻そうとした海の手を掴んで自分の方へと引き寄せる。
『土方しか気づいてない』
「他の奴らに言ってないのかよ」
『言ってどうする。変に気を遣わせるだけだ』
「お前はそうやってまた一人で抱え込むつもりか」
いつもそうだ。誰にも相談せずに自分だけで完結する。白詛に掛かったことを誰にも打ち明けず、海はひっそりと一人で死ぬ気だ。お妙の話から察するに、海は随分と前から白詛に掛かっていた。それを隠すために江戸を離れて距離を置いた。
「白詛になってることを隠し通そうとしたのか。しかも、突然いなくなっても心配されないように布石を打って」
江戸に居たり居なかったりを繰り返していれば、新八たちは海が居ないことに慣れてくるはずだ。探して見つからなければ、またどこかに行っているのだろうと。次いつ戻ってくるのかは分からない。海の気まぐれでまた会えるかもしれない、と。
「あいつらに何も言わないつもりか」
『しつこい。どいつもこいつも。一人居なくなったくらいで騒ぐな』
「ふざけんじゃねぇよ。そこらのやつが居なくなるのとは訳が違う。海がいなくなったら……どっかで死んでるなんて聞いたら」
胸が苦しくて息をするのが辛い。今ここに海がちゃんと居るのだと確かめたくて銀時は海を強く抱き締めた。
『まったく……こうなるから嫌なんだよ』
小さく聞こえた声はとても弱々しく、今にも泣き出しそうだった。
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