第270幕
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
銀時が出てから暫くは互いに黙ったままだった。小声で話しているのかと思ったが、そうでもないらしい。
先に口を開いたのはお妙の方だった。
「海くん、銀さんたちには言ったの?」
『何を?』
「その感じだと言ってないのね」
『あいつらに話すことなんてないだろ?』
「ちゃんと話さないと。じゃないと手遅れになっちゃう」
『手遅れも何もない。あいつらが知るべきことではないよ』
「そんなのダメよ。ちゃんと自分のこと銀さんたちに話して」
『言うつもりはない。そうなる前に……ここを離れる』
「ダメ……そんなの許さない」
『許してもらおうなんて思わない。今まで好き勝手にやってきた報いはちゃんと受ける』
「お願いだから。お願いだから銀さんたちに……銀さんにはちゃんと言ってあげて。海くんが銀さんを探し続けたように、今度は銀さんが海くんを探しに行っちゃうから」
『そうならないようにすればいいんだろ?あいつが追ってこない程の喧嘩でもすればいいさ』
「海くん!」
『叫ぶと身体に障る。もうこの話はお終い。ゆっくり休めって言ったろ』
こつり、と靴音がこちらへと近づく。海が何かを隠したがっているのは明白なのだが、その話の核がまるで見えてこない。
「(何を隠してるんだ?)」
「そうやっていつまで隠し続けるつもりなの?海くんがいなくなったら……新ちゃんと神楽ちゃんがどれだけ悲しむと思ってるの?二人だけじゃない。他のみんなだってそうよ」
『……だからこの五年、江戸に戻らないようにしてたんだろうが』
「そんなのあんまりだわ」
『どう言われようと決めたことだ。誰がなんと言おうと俺はやめるつもりはない』
「海くんのわがままじゃない。残される人の気持ちを考えてあげて」
『残されるねぇ。どっかのバカには散々苦労したんだ。今度はあいつが苦労すればいいと思うけど?』
「それで……それで海くんは満足なの?一人で勝手にどっか行っちゃって、銀さんたちを困らせるのが海くんのやり方なの?」
『そうなるのかもな』
「人でなしよ。海くんがこんなに酷い人だったとは思わなかった」
『今更だな。俺は聖人君子じゃない』
お妙に罵倒されても海は気にもせず受け流す。暫く無言が続いたあと、お妙のすすり泣く声が微かに聞こえた。
「辛いのよ?いつ死んじゃうんだろうって。身体が思うように動けなくなって、目も見えなくなって。段々と何も出来なくなっていくの。とても怖くて、凄く恐ろしいのよ」
『そうだな』
「海くんは……海くんはそれでも一人で死ぬつもりなの?」
『……さあ』
そこからは銀時の耳には入ってこなかった。
"死"という単語が出た時に頭が真っ白になり、何も考えられない。ただ、わかることは、海が死の間際だということ。
「どういう……ことだよ」
.