第269幕
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「海!!」
海はその場に残っていたが、もう一人の方はどこにもいない。海を守るように背中に隠して辺りを注意深く見る。
『なんで来た』
「なんでって……あいつは……」
『俺はあそこに居ろと言ったはずだ』
「しょうがねぇだろ。身体が勝手に動いちまったんだから」
周囲の安全を確認してからゆっくりと海の方を振り向く。
『さっさと戻れ。ここにはもう用はない』
「さっきまでここに厭魅がいただろ」
『お前の見間違いだ』
「あの姿を見間違えるわけがない。あれは厭魅だ」
顔に巻かれた異様な包帯は厭魅が付けていたものと酷似している。
『しつこい』
「あいつはどこに行ったんだ?まさか海がやったのか?」
『俺が来た時にはもう"居なかった"』
「そんなはずはねぇだろ。俺が見た時は一緒にいたはずだ」
『だから言ってるだろうが。お前の見間違いだと』
何故か海は厭魅を庇うように否定し続ける。聞き出そうとする銀時に背を向けて海は屋根から地面へと降りた。
『戻るぞ』
「なんであいつを庇うんだ。白詛を地球に振り撒いたやつなんだろう。とっ捕まえて止めさせないと死人が増えるんじゃねぇのか!」
『それをやるのはお前の用じゃない。お前はお前の用を済ませろ。余計なことに首を突っ込むな』
「いいや。関係あるね。あいつを何とかしねぇと俺の用はどうにもならねぇんだよ」
海の後を追って銀時も下へと降りる。その時に海の足元が目に入り、靴を履いていないことに気づいた。
「靴も履かずに何やってんだよ。泥だらけじゃねぇか」
『……忘れた』
「忘れたって……室内にいたんだから靴履いてないのは分かってるでしょうが。どんだけ急いでたんだよ」
土方の制止の声も聞かずに海は飛び出して行ったのだ。相手が厭魅であれば仕方ないとはいえ、これはあんまりにもドジすぎる。
「ほら」
『は……?』
「それじゃ怪我するだろ。あっちに戻るまでおんぶしてやるから」
地面に膝を着いて背中に乗るように促す。何度も瞬きをして驚いている海に思わず吹き出してしまった。
「そんなに驚くことかよ。おんぶされんの初めてとかじゃないだろうが」
『なんでお前に背負われなきゃならないんだ。別に怪我してないから問題ない』
「これからするかもしんねぇだろ?足元暗くて見えねぇんだから危ないでしょ」
『それを言うなら俺を背負う方が危ない。両手が塞がる』
「なに?心配してくれてんの?大丈夫大丈夫。海の一人や二人くらい楽勝だから」
だから早く乗れと急かすが、海は嫌そうな顔をしながら後ずさる。
『ふざけるな!誰がお前に……ゲホッ!』
「海!」
文句を言い出したかと思えば、海は突然咳き込んでその場に座り込む。
『っ……は、』
「大丈夫か!?」
『気にしなくていい。いつもの……ことだから』
苦しそうに咳を繰り返しながらなんとか呼吸を整えようと深呼吸を試みるも、深く息を吸う度に強く咳き込んでしまって呼吸どころではなかった。
「お、おい……これ!」
『そんなに……騒ぐな』
「騒ぐなって言われても……!お前これ血じゃねぇか!」
口を押さえている海の手は真っ赤に染まっている。ぽたぽたと垂れている血は地面を赤く濡らしていた。
「病院……!病院に行くぞ!!」
海の腕を掴んで無理矢理背負う。ぐったりとしている海はされるがまま病院へと運ばれた。
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