第269幕
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「人体実験って……なんだそれ」
『そのまんまの意味だ。人の身体を好き勝手にいじくって何かしてた』
「お前……そんなこと一度だってッ──」
じっと海に見られて銀時は慌てて口を押さえた。あの時迎えに行ったのは"銀時"だ。だから自分は知るはずもないこと。
「戦争には従事してたが、そんなことになってたなんて聞いた事ねぇよ。確か銀さんが海を助けに行ったってのは聞いたけど」
はぐらかすように目を逸らす。隣からは探るような目を向けられたが、銀時は気にしないように務めた。
『言わなかった。別に大したことは無いと思っていたから。今思えば……アイツらは俺にそのナノマシンを組み込ませようとしてたんだろうな』
「ナノマシンを組み込ませる?」
『捕まってた間、色んな実験を受けた。何をしていたのかまでは分からなかったが……まあ身体の拒否反応が酷くてな』
「拒否反応?」
『アイツらが何かを施すたびに体調不良に見舞われてた。何度か逃げ出そうとしたんだが、実験のせいで体力を奪われて船から出ることが出来なかった』
銀時が助けに行かなければ海は、自力で逃げ出すことが出来なかったのだ。あの時、海はなんて事ないという顔をしていたけれど、本当はしんどかったのだろう。それを悟らせないように何ともないというように、平然とした態度で迎えに来た銀時に悪態をついて。
探し出して良かった。あのまま海の事だから、どうせ迷子になっているだけだと思い続けていたら。もしかしたら海はここに立っていなかったかもしれない。
『実験は全部失敗に終わった。厭魅は俺を苗床にして攘夷志士を壊滅させようとしていたみたいだけど、その作戦は遂行されなかった』
「なんで海にナノマシンが効かなかったんだ?」
ただの病原菌とかであれば免疫を持っていたとかで回避出来るかもしれない。でも、ナノマシンともなれば話は変わってくる。間接的に白詛の餌食となってしまった人達はバタバタと死んでいっているのだ。直接入れられたとなれば海は無事では済まないはず。
『それは……』
海はそのまま黙り込む。一番気になる所で黙りこまれてしまい、銀時は訝しげに海を見つめた。
「白詛は厭魅に繋がっている。それは確かだろう」
話を遮るように土方が口を開く。海は俯いたまま顔を上げることは無い。
「あの男は白詛の原因を知っていた。行方不明になる前にあいつは屯所に来て海の事を探していた。あれほど必死なやつの姿は初めて見たな」
『その時はタイミング悪く屯所に居なかったんだ。松平さんに呼ばれて城に行っていたから。帰ってきてから銀時が屯所に来たたことを聞いた時もどうせいつものやつだろうって。厄介事に巻き込まれたから助けてくれっていう話だろうってそう思ってた』
海の予想は大きく外れ、その後すぐに銀時が行方不明になったと新八と神楽が海の元を訪れた。
銀時のことをすぐ探さなかったことを海は今でも後悔している。
「だからずっと探し続けてるの?」
『俺の事を探していた理由は今だからこそわかる。あいつは俺の事を心配してたんだ』
「まあ……そうだろうね」
『逆の立場だったら銀時の安否を確認するまではその場を離れない。だけどあいつはふらっと消えた。その意味わかるか?』
「意味?屯所に居ないって分かったんだから他のところ探しに行ったんじゃねぇの?」
『それならいいんだけど』
意味深な言葉を残して海は再びおにぎりに口をつける。
銀時の知っている海と今目の前にいる彼は同じ人間のはずなのに。それなのに海のことが分からない。
「(癖は未だに直ってねぇけど、隠し事が上手くなってんな)」
海は何かを隠している。それは確かだ。
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