第262幕
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「待たんかいや!なっなっ……何じゃこりゃあ!!」
ピカッと目の前が光に覆われ眩しさに目を閉じた。そして次に目を開けたとき、銀時は映画館ではなく外にいた。
「完結篇って本当に銀さん完結してんだろーが!劇場版だからって何はしゃいで勝手なことやってんの!!普通こういうのは煽るだけ煽って大丈夫なパターンじゃないの!?そもそも完結とか言っておきながら始動ってどういう意味!?終わりの始まりってか?上手いこと言ったつもりになってるけど全然終わってないからね!?むしろこれからだからね!?」
とりあえず目の前に居た映画泥棒に怒りをぶつけるように頭突きをして倒す。
言いたいことを散々ぶちまけてからふと我に返って辺りを見渡す。雲ひとつない晴天にじんわりとした暑さ。聞こえてくるのは蝉のけたたましい鳴き声。
そして周囲に並んでいる墓石。
「あれ?俺……さっきまで劇場にいたよな。なのにこれ……いやいやいやいやいやいやいや……!」
顔をひきつらせながら映画泥棒の元へと戻るが、まだ気絶しているのか倒れたまま。ここがどこなのかも分からない。辺りを見渡しても周りに誰も居ないから聞くことも出来なかった。
「あれだよあれ!3D映画!最近のCG技術の発展はめざましいものがあるからさ。ほらあのアニメ!閃○のハサ○ェイ!あれもCG凄かったじゃん!何となくタイトルに引っかかって見ちゃったけど、あれなんか凄くかっこよかったじゃん!俺好きだよ、ペー○○ペー!暗くてよく分かんなかったけど!それと同じだろ?最近俺らのグッズも沢山出てさ、もういっその事映画に出しちゃえよっていう流れだろ!?やっちゃえよ!っていうノリだろ!?」
ここが現実でないならば目の前にある団子だって本物では無い。二本並んでいる団子を手に取って口の中へと突っ込む。串を引き抜いて団子を咀嚼する度に冷や汗がぶわりと噴き出した。
「いやいやいや、団子くらい食えるよそりゃ!だって3Dって元々三つの団子の意だからね!確かそんなんだったからね。大丈夫だ、これは絶対3Dだ」
※3D=three dimensions(三次元、または立体)
大丈夫だ大丈夫だと自分に言い聞かせていた瞬間、こちらへと向かってくる足音が聞こえた。咄嗟に近くの墓の裏へと隠れたが、通りには映画泥棒が寝転がっている。慌てて彼の足を掴んで裏へと引きずり込んだ。
「おやおや、あいつの供え物がなくなってらぁ。銀時……アンタみたいなバチあたりがまだこの世にいたんだねぇ」
「(バ……ババア!)」
こっそりと表を見るとそこにはお登勢の姿。銀時の名を口にしながらお登勢は墓石に向かって話し続けている。
「アンタも昔、私の旦那の供え物盗み食いしてたっけねぇ。まさか同じ目にあうとは、これも因果応報ってやつかね。早いもんでアンタが死んで五年……この街もアンタがいた頃とはすっかり変わっちまったよ。今のこの街見たらアンタは一体なんて言うだろうね。アンタのいる世界が地獄なのか私らのいる世界が地獄なのか……今じゃわかりゃしないよ。それでも皆生きてるよ。アンタの死を受け止めて、それぞれがそれぞれの道をさ。だからアンタもそっちで元気にやりな」
墓石の裏から見えた風景は銀時が昨日まで見ていたものとは全く違う風景だった。
崩れたビルに荒廃した街。まるで廃墟にでもなったかのような家々に銀時は口をあんぐりと開けることしか出来なかった。
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