第268幕
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「俺たちの大将にかんぱーい!」
エリザベスの掛け声の後に続くように他の奴らもジョッキを掲げて酒を飲み交わす。
「本当にお前たちには何と礼を、いや詫びたらいいか」
「俺たちが不在の間、苦労を掛けたな」
「なあに。ちょろいもんよ」
「真選組が手を貸してくれたんだ。今の我らに敵は無い」
「いやいや何をおっしゃるエリザベス殿。此度の貴殿の武者ぶりこそ称賛すべきものであった」
「土方殿こそ鬼の副長の名に恥じぬ戦いぶりでござった」
「エリザベス殿、それは昔の話だ。今の我々は白き雷、スーパーマヨブラザース。トシアンドエリーだ」
「そうであったなトシ」
「これからもよろしくなエリー」
『(騒がしくて寝れやしねぇ)』
近藤と桂を取り戻した祝いとして土方たちは宴会を楽しんでいる。そんな彼らの視界になるべく入らないように海は部屋の隅に座っていた。
「兄さん、そんな所にいないでこっちに来たらどう?」
「朔夜の言う通りですよ。それじゃまるでいじめられっ子の修学旅行みたいですぜ?」
『好きに言ってろ。俺はそっちに入る気はない』
こっちに来いと言ってくる朔夜達から顔を逸らし、海は天井を見上げる。
『(近藤と桂が戻ったのならやることは無いな。あの義兄弟の用が済んだら一度江戸を離れるか)』
江戸に戻ってきたのは近藤らの処刑を阻止することだった。無事に二人を取り戻したのであればここに長居する理由は無い。海が江戸に居れば居るほど役人共の警戒が強まっていく。そうすれば土方たちが動ける範囲が狭まってしまうのだ。
『これさえなければそう狙われることもねぇのにな』
「これって何?なんかあんの?」
ちらりと視線を横に流す。
『お前は向こうに行ってろ』
「なんで君こんなところにいるの?あっちで飯食ってればいいじゃん」
『人の話を聞いてたか?』
「聞いてた聞いてた。なんかMVPとか何とかって言われたけど、俺なんもしてないし」
『お前らが騒いでくれたおかげでこちらは上手く事が運んだ』
万事屋のおかげで計画通りになった。だから新八たちは今回の立役者だと近藤たちに持て囃されている。彼らが居なければ救い出すことは難しかっただろうと。
「そんなこと言っちゃって。俺らが居なくてもゴリラとヅラは君が助け出すでしょ?」
『でなければ戻ってきた意味が無いからな』
「じゃあ……君はまたどっか行っちゃうの?」
『まあな。ここにいればアイツらの邪魔になる』
「それって今すぐ……なの?」
『約束は守るつもりだ。だから早くその用とやらを終わらせろ』
この男のせいで江戸に残らざるを得ない。新八と神楽がいるのだから自分は離れてもいいと思ったのだが、約束をしてしまった以上はまだ離れない方がいいだろう。
海の言葉に男は嬉しそうに笑って、隣に腰を下ろす。
「良かった。すぐ江戸を出ていくのかと思った」
『どっかの誰かと違って俺は守るからな』
「どっかの誰かって……銀さんのこと?」
『あいつしかいないだろ。置いていかないとか言った癖に……あのバカは』
何も話さずに銀時は消えてしまった。新八と神楽にさえ何も伝えていかなかった。書き置きも銀時に繋がる手がかりの一つも彼は残さなかったのだ。だからどれだけ探しても見つけることが出来ない。
『死んでるならそれでいい。でも、生きてるなら……まだどこかにいるなら』
「海……」
『死ぬ前に殴らないと気が済まない。新八と神楽にどんだけ心配かけてんだあのクソ天パ。一発二発殴ったくらいじゃ足りないくらい溜まってんだからな』
「なんか思ってたのと違うんだけど。生きてるなら会いたいとかって言うのかと思ったらそっち!?銀さん殴りたいがために探し続けてるの!?」
『当たり前だろうが。人様に迷惑をかけた分を払わせるんだよ』
「そ、そうですか」
顔をひきつらせて苦笑いを浮かべる珍宝に海は不思議そうに首を傾げた。
『なんだよ』
「いや、案外強く生きてるんだなぁって。なんかもっと落ち込んでたりするのかと」
『それはもう散々やった。落ち込んでる暇があるなら動いていた方がいい』
「それで全国フラフラしてたの?元気すぎない?」
『それが出来るくらいの体力は残ってる』
「残ってるって、それどういう──」
「おい、海。お前いつまでそんな所にいるんだ」
珍宝と話しているところへと土方が不機嫌そうな顔でやってきた。海を見た後に珍宝へと目を向けたのだが、その視線はどこか厳しい。
「お前なにもんだ。なんでこいつと一緒にいる」
「それが人にものを聞く態度なの?別に俺と彼の関係を君に話す必要はないでしょ」
珍宝のひねくれた返しに土方の眉間のシワはより深くなる。一触即発な雰囲気に慌てて近藤が間に入ろうとしてくるも、土方は近藤の話を無視し続けた。
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