第267幕
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「何やってんだアイツら」
『さあな』
「アイツらといたんじゃねぇのかお前」
『あれの中の一人を保護してただけだ。新八たちと一緒に居たわけじゃない』
銃の弾を確認しながら土方の問いに淡々と答える。
聞こえてくるのは先程まで一緒にいた男の叫ぶ声。源外を助けようと声をかけているようだが、誰も男に手を貸すものなどいない。
『あれだけ騒いで邪魔しているなら総悟と朔夜の方は心配要らなさそうだな』
「ああ。たまには役に立つもんだな」
『たまには、だが』
「そんなことより……お前大丈夫なのか?」
『何が』
近藤の方を見ていた土方の目が海の方へと向けられる。聞かれた事の意味を知っている海はその目から逃げるように顔を背けた。
「分かってるだろう。お前だってそうは──」
『問題ない。気遣われるほど弱っては無い』
土方の言葉を遮るように返すと、土方は重いため息を吐いた。
「……無理はすんじゃねぇぞ」
『無理のしようがないだろ。俺たちが陰で動いてんのは分かってるはずだ。それなのにあんな少ない人数で処刑をするなんてよ』
あまりにも手薄すぎる。警備を怠っていると見せかけて裏で待機しているヤツらがいるのかと周りを警戒しているのだが、幕府の人間が潜んでいる気配は全くなかった。
「このご時世だ。そこまで手が回らねぇんだろう」
『だから忍びと手を組んだってことか』
「忍び?何の話だ」
『少し前に襲われてな。その時に忍びが混じってた』
役人らを始末したけど、あの場にいた忍びたちは逃がしてしまった。彼らは交戦せずに海の姿を確認した後、役人らを置いて去っていった。
幕府の忍びといえば御庭番衆が思い浮かぶ。でも彼らは御庭番衆とは似ても似つかない。気配の消し方があまりにも下手すぎるのだ。偵察として来るのであれば海に気づかれないように近づくはず。それなのに彼らは役人たちと共に来て海の姿を見た瞬間逃げていった。
『あいつらと比較するのもどうかとは思うが、あんまりにもな』
「海」
『どうした……土方?』
「怪我は、怪我はしてないな?」
そっと頬に土方の手が触れる。まるで生きているのを確認するような仕草。
『してない。役人共は全員あの世にいるけど』
「本当にしてねぇんだな?」
『かすり傷ひとつない』
心配ないと言っても土方はまだ不安そうに海を見る。こうなったらずっと彼は海から目を離さなくなる。そうなるとこれからの行動に制限が掛かってしまう。
『怪我はしてない。そんなに気になるなら確認してみろよ』
「か、か、確認ってなんだ!そ、そんなこと出来るわけねぇだろうがッ!」
『ならいつまでもそんな腑抜けたツラしてんじゃねぇよ。これから近藤さん助けに行くんだろ』
別のことで頭がいっぱいになって計画が上手く進みませんでしたではシャレにならない。今日を逃したら近藤を救い出す機会が無くなってしまうのだから。
「危ないと思ったらすぐに言えよ。なるべく近くにはいるが……」
『はいはい。気をつける』
「そう言ってお前はいつも無理するんだろうが!」
『しつこいぞ父さん』
「誰が父さんだ!こんな息子育てた覚えはねぇぞ!」
小言が耳に入らないように手で塞ぎながら銃を手に処刑場へと向かう。既に総悟と朔夜の方は準備が整っているのか、海たちがいる反対側の方で手を振っていた。
『さて。始めるか』
近藤らの頭上へと振り上げられる刀。その手に向けて引き金を引いた。
.