第266幕
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『ん……』
「海?」
『銀……?』
「目ぇ覚めたか?」
『ま、だ……』
「眠いなら寝とけよ。どうせまともに寝てなかったんだろ?」
薄らと目を開けたかと思えば、海はまた目を閉じた。着物を掴んでいる手へと自分の手を重ねるとやんわりと握られる。
『銀、銀、』
「ここにいるから。心配すんな」
手を握り返しながら優しく声をかける。寝かしつけるように頭を撫でてやれば海はまた夢の中へと落ちていった。
「こんな状態なのにこの時代の俺は何してんだか」
海を一人残してどこへ行ったんだ。
例え大事な用事があったとしても海に何も伝えずに残していくなんてことはしない。そんな事をしたらこうなるのは予想できるから。自分を見つけ出そうと必死になって探すに決まっている。
「ごめんな、海」
置いていったのは"自分"ではない。でも、それでも謝らずにはいられなかった。
寂しげに銀時を呼んだ海の声に胸が張り裂けそうだ。出来ることなら銀時だと身を明かしたい。そうすれば海が無理をすることもなくなる。
「ごめんな」
それが出来ないのがなんとも歯痒い。こんな装置がつけられていなければ海を安心させられるのに。
「海」
『……なに』
「起こしちまったか?」
『ブツブツとうるさい』
少し不機嫌そうな表情を浮かべながら海はしっかりと銀時のことを見ていた。
「悪い。もう何も言わねぇから」
だから休むようにと声をかけたのだが、海はむくりと起き上がってしまった。
『もういい。そんなに眠く……』
「うん?」
海の目線が下へと向けられ、銀時はその目の先を追った。
『なんで掴んでるんだ』
「なんでって……海が握ってきたんだよ?」
『俺が……?』
「うん」
さっきの事は覚えていないのだろう。銀時の名前を呼んだことも、縋るように手を握ってきたことも。
『離せ』
「そっちから握ってきたくせに」
『振り解けば良かっただろ』
「そうして欲しかった?」
銀時の問いに海は口ごもる。
「しないよ。だからそんな顔すんな」
酷く動揺している海に緩やかな笑みを浮かべて頭を撫でた。
『触るな』
「そう言ってる割にはだけどな」
『うるさい!』
「はいはい。本当に素直じゃねぇな」
慰めるように頭を撫でてやれば、海は恥ずかしそうに俯く。口では文句を言っているけど、銀時の手を振り払おうとはしなかった。
その後、我に返った海に思い切り投げ飛ばされて今度は銀時が気を失ったけれど。
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