第266幕
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「とまぁ、そういうことだから」
「そういうことってどういうことだ。ちゃんと説明しろ」
「そうよ。なんで海がアンタの言うこと聞いてるのよ」
「聞いてるというか、ただ付いてきてくれてるというか見張られてるというか」
新八と神楽からの詰問から逃れようと銀時は後ろにいる海へと目を向ける。視線の先では先程お登勢から渡されたおにぎりをもぐもぐと食べている海。リスのように口の中に頬張っている姿はなんとも可愛らしいのだが、今はちょっと助けて欲しい。
「あ、あの桜樹さん?君からも説明してもらってもいいかな……」
「あの人は今食事中だ。邪魔をするな」
「そうよ。アンタが説明すればいいだけでしょ?」
銀時の視界を遮るように二人はずいっと顔を寄せる。このままじゃストレスでさっき食べたご飯を吐き戻しそうだ。
『騒がしい』
「だってコイツ海のことをパシリみたいに言ってるのよ!?」
「そうですよ!こんなぽっと出のやつに良いように言われて怒らないんですか!」
『別にそんなに言ってないだろ』
「「でも!!」」
『騒がしいと言ったのが聞こえなかったか?』
おにぎりを片手に持ったまま海は新八と神楽を蹴り飛ばす。勢いよく蹴られた二人は近くの建物へとぶつかって消えた。
「ちょ、やりすぎじゃない!?」
『頭を冷やすのには丁度いいだろ』
「冷やすどころか無くなっちゃうけど!?アレ頭吹っ飛んでるよねぇ!?」
『静かになるならそれでいい』
「それ息の根止めるってこと!?」
『そこまでは言ってない』
「それに近いこと言ってるよね!?もはや殺しにかかってるよね!!」
蹴飛ばしてスッキリしたとでも言いたげな表情で海は食事を再開する。
「それより……桜樹さんいつもフード被ったままなの?」
昨日からずっと気になっていた事。朝でも夜でも海はコートのフードを被ったままだ。顔は見えるからそんなに気にとめていなかったのだが、改めて見ていると段々と気になってくる。
『お前には関係ない』
「ご飯食べてるときくらいは帽子脱ぎなさいよ。マナー悪いだろうが」
『そんな事を気にしていられるような状況か?』
「そりゃまあこんな世の中だから礼儀だなんだって言われても説得力ねぇのはわかるけど──」
『そういう意味じゃない』
グイッと手を引っ張られて海の背後へと回る。いきなり何をするんだと文句を言おうとした銀時の視界にキラッと何か光るものが映る。それは先程まで銀時が立っていた場所へと突き刺さった。
「なっ、おい!これ……!」
いくつものクナイが地面に刺さっているのを見て血の気が引いた。海が手を引いてくれなかったらこれは確実に自分の背中へと刺さっていただろう。
『忍まで雇うとはな』
「何!?なにごと!??」
『いつもの事だから気にするな』
「俺はいつもクナイを投げつけられるなんてことは無いけどね!?」
ざっと現れたのは固い表情を浮かべた役人たち。皆、海と銀時に向けて刀を向けていた。
「元真選組副長補佐の桜樹海だな?大人しく我らに付いてきてもらおう」
『断る』
「貴様に拒否権などない!」
『なら最初から相手に聞くな。目障りだ』
役人たちに応戦すべく海も刀と銃を取り出して構えた。
「待て待て待て!あんたらなんの理由でコイツを連れていこうとしてんだよ」
すかさず海と役人らの間に入るように身を滑らしたが、刀の切っ先を向けられて銀時は後ずさった。
「誰だ貴様は!邪魔をするのであれば貴様から斬るぞ!」
「話を聞けって!なに?この人なんかしたの?そんな寄ってたかって刀向けるほどコイツ悪いことでもしたのかよ」
なんとか止めようと声をかけるも役人たちは銀時の話に聞く耳を持たない。このままでは海が連れていかれるかもしれないと焦り始めたとき、後ろからけたたましい音が響いた。
それと同時に銀時に刀を向けていた男がバタリと倒れる。
『引っ込んでろ。怪我をしたくなければな』
「待ッ……」
後ろから襟を引っ張られて地面に尻もちをつく。それからは一瞬だった。周りにいた役人たちは海の手で一人残らず殺されて辺りは血塗れ。その場で呼吸をしているのは銀時と海だけとなった。
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