第265幕
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未来二日目で迎えた朝は気持ちのいいものでは無かった。
「しまいっぱなしの布団ってこんなカビ臭くなるのね」
外で寝るのは流石にキツいと思って万事屋に帰ってきた。いつもの様に自室の押し入れから布団を取り出して敷いたのだが、鼻につくカビ臭さがなんとも言えない。何年も放置された布団は所々黄ばんでいる。
とてもじゃないが、次の朝をこの布団で迎える気にはなれない。
「万事屋を継ぐとかなんとか言ってる暇があるなら布団くらい干しとけっての。大体、家の中ホコリだらけじゃねぇか。掃除しろ掃除」
ぶつぶつ文句を零しながら玄関へと向かいブーツへと足を滑らせる。今日もまた海に会いに行く予定だ。
「屯所にいる……よな?白詛だかなんだか蔓延してるんだからそんなふらふら動き回ってねぇだろ……多分」
新八と神楽に海の居場所について聞いてみたが、二人とも考え込んだまま黙り込んだ。白詛が江戸に広がってからというものの海は色んなところを転々としている。今は江戸から出ていないのか、比較的遭遇する確率は高いと新八は言っていた。
屯所に海が居るなんて思わなかったと驚いていた二人は嘘をついているようには見えなかった。
「さてと。とりあえず屯所に行ってみるか」
布団を押し入れへと戻して家を出る。
もしかして、という期待を胸にしながら玄関の戸を開く。眩しい朝陽で眩む視界。光に慣れて見えた世界は昨日と同じ景色。
「戸口を開けたら元の世界に戻ってました、なんてドッキリ展開あるわけねぇよな」
少しでも期待した自分がアホくさくなる。そんな簡単に元の世界に戻れたら苦労はしない。小さくため息を付きながら階段を降りると、店の前でお登勢が煙草を片手に突っ立っていた。
「あんた上に泊まったのかい」
「え?ええ、泊まる所がなくて」
「よくあんな所で寝れたじゃないか。誰も掃除に来ないからホコリまみれだったんじゃないかい?」
「ホコリまみれっていうか黄ばみまみれっていうか」
「まだこの町にいるんだったら窓開けて換気しときな。白詛にやられる前にホコリで肺がいかれるよ」
「き、気をつけます……」
「今日はどこ行くんだい」
「えっと……桜樹さんを探そうかと」
「黒猫?あいつは探して見つかるようなやつじゃないよ」
やはり海は江戸中をふらふらしているのか。
白詛の情報を集めているのか、それともまだこの世界の銀時のことを探しているのか。
「でも、昨晩は屯所に居たんです。だから今日もいるかなって」
「……居たらここに連れてきな」
「え?」
「行くって言うなら止めやしないよ。探せるもんなら探してきな。一日で見つかるとは思わないがね」
煙草を吸い終わったお登勢は店の中へと消えていく。ピシャリと戸を閉められ、銀時は呆然とその場で立ち尽くしていた。
「ったく。心配してるって言えばいいだろう」
海を見つけることが出来たらお登勢の店に連れて来よう。きっとたまも心配しているはずだ。
「それにしても……腹減ったな」
屯所までの道すがらお腹が何度も鳴った。昨日の昼頃にこちらに来てから何も食べていない。情けない音を鳴らす腹を撫でる。
「飯食うっていっても店なんか開いてねぇしな」
コンビニがあった場所には廃墟がある。パフェを食べていた行きつけのファミレスは跡形もなく朽ちていた。ここら辺で店を営んでいるのはお登勢のスナックくらいだろう。そこだって最早店として機能しているか怪しいところだ。店舗があっても入ってくる客がいないのだから。
「これ世界を救う云々の前に餓死するんじゃ……」
嫌な考えを払拭するために銀時は頭を振る。新八と神楽がピンピンしてるのだからどこかで食事はとれるのだろう。あの大食らいの神楽がいるのだ。きっとそこのところは問題ないはず。
「今は飯より海が先だ。あいつの方が白詛だなんだって詳しいだろ」
屯所の前についたところで一息つく。助走をつけて塀を飛び越えて庭へと降り立った。
「えっと……桜樹さん!います?」
一応声をかけてみるが返事は無い。
庭をうろうろと歩き回ったが人の気配は無い。屯所の中も覗いて見たけど同様だった。
「マジかよ。どこ行ったんだあいつ」
屯所にいないなら何処を探せばいいのか。とりあえず外に出ようと再度塀を乗り越えた先。黒い物体がそこにあった。
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