第265幕
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「それで?海と話してきたの?」
「話っていうか……ただ殴られただけというか」
「あんた本当に何しに行ったんだ」
殴られた頭を擦りながら屯所を眺める。
万事屋を再結成すると言った時の怒りっぷりは尋常ではなかった。そもそも海が本気で怒るところを見たのは久しぶりのことだ。彼は怒りを出す前に身体が先に動いてしまうから。
「万事屋の再結成は認めないってさ」
「当たり前でしょ。あんたみたいなよく分からないやつを万事屋に入れるわけないじゃない」
「最初から分かってたはずだ。あの人を説得するのは無理だと」
そう言いつつも二人はどこか寂しげな表情。もし海が自分のことを認めればまた三人で万事屋を営むことが出来たかもしれないと期待したのか、それとも変なやつを万事屋に入れようとしていると気づいた海が表に出てきてくれるのでは無いかと思ったのか。
どちらにせよ二人の悩みを晴らすには海が必要になる。
それならば。
「五年しか経ってないのに随分と頑固親父になりやがったな」
「海は親父じゃないわよ。そこらの汚い親父と一緒にしないで」
「あの人を侮辱するならいくら銀さんの義兄弟でも許さない」
「なんなの君ら。もはや宗教みたいになってない?」
新八と神楽が海にとても懐いていたのは知ってるけど、こんな宗教じみてはいなかったはずだ。それに今の海は二人を遠ざけようとしている。靴裏に引っ付いたガムのようにくっついてくる二人だからそう簡単に海から離れようとしないのは分かっているけど、あれだけ強烈な言葉を投げかけられたら少しは距離を置こうと思ってしまうのに。
「大好きすぎるだろ。いくらお前らでも嫉妬するよ?」
側で見守ってくれる人間がいるのは安心するが、保護観察以外の気持ちを持たれると厄介だ。特に新八は海との時間が長い。師弟関係だというのは十分理解してるけど、それ以上の想いを持っている気がしてならない。
「それで?どうするつもりだ?」
「どうするもこうするもねぇだろ。アイツを説得しなきゃ万事屋再結成できねぇって言うならやるしかないんじゃない?」
「でもあんた追い出されたんじゃないの?」
「一回追い出されたくらいで諦めるほど潔くないからね俺」
「なんでもいいけど……海を困らせることはしないでよね」
ふんっと鼻を鳴らして神楽は定春を連れて屯所を離れる。新八も用は済んだとばかりに神楽とは真逆の方へと歩いていく。
「ったく、いがみ合ってる場合じゃないだろうが」
万事屋をどうするかよりも先に海をあの薄暗い屯所の中から引っ張りださなくては。手入れのされていない部屋にはホコリが溜まっていたのだ。疫病にかからずとも別の病気を患ってしまいそうなほど環境が悪い。
「さて、どうやってあそこから出すかな」
ぽつんとその場に一人残った銀時はポツリと呟く。前途多難ではあるが、まだ希望はある気がする。この世界の銀時は行方不明になっているけど、海がいる。それなら何とかなるかもしれない。
「とりあえず今日のところは帰るか……って、どこ行けばいいんだ」
万事屋に帰るといってもあそこもホコリまみれになっている。押し入れの中にはまだ布団が置いてあったから寝ることは出来るかもしれない。でも、五年も放置されていた布団はすぐ使える状態なのか。
「……え、今日野宿?」
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