第264幕
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「こんな暗いところに一人でいるとか寂しくないわけ?」
『そう思うなら帰れ。外で待ってるだろ』
「あいつらだって君と話をしたいと思ってるよ」
『する必要は無い』
「そう言わないでさ。少しは二人のこと構ってやったら?」
話をしようと持ちかけた時は問答無用で蹴り飛ばされて追い出されそうになった。何度も頼み込んだことで漸く相手が聞く気になってくれたが、その頃には銀時の身体はボロボロ。今は屯所の縁側でぐったりと横になっていた。
『あいつらはあいつらでやってる。俺が気にかける必要はもうない』
「そう見えるかもしれないけど、まだまだガキのまんまよ?顔合わせりゃ子供みたいな喧嘩するじゃねぇか」
『喧嘩で済んでるからいいだろ』
「喧嘩で済まなくなったら?互いに潰し合いになったらどうするんだ?」
『その時は俺が両方潰すから心配ない』
「いや、その前に止めてやれよ」
『それよりいつまでここに居るつもりだ』
「だって動けねぇんだよ。海……えっと桜樹さんが蹴りかかってきたから」
動けないことは無い。身体の至る所に痣が出来ているだろうけど、骨折などはしていないから歩けるは歩ける。
海の動きをよく知っているから蹴られないように避けることは出来た。でもそれが出来るのは"銀時"なのだ。自分は銀時の義兄弟という身。いくら海の存在を知っていたとはいえ海の動きまで知っていたら不審がられる。だからあえて避けずにいたのだが、まさか手加減されることなく蹴られるとは思っていなかった。
歩けるけど今は少し休みたいというのが本音だ。
「桜樹さんって銀さんの恋人なんだよね?」
『さあな』
「えっ!?違うの?!」
『想像に任せる』
「想像って!?どんな想像!?」
はっきりとした肯定の言葉は出なくとも、そう受け取れる言葉が返ってくると思っていたのにまさかこんな曖昧な言葉が返されるとは。すかさず海の左手へと目を向けたが、相手は腕を組んでいるから手元は見えない。
「まさか……別れたの?」
ごくりと喉を鳴らして問いかける。銀時の問いに海は黙り込んだ。
「何かあったの?」
『死んだ人間と付き合ってるとは言えないだろ』
「君は銀さんが死んだと思ってるの?外にいるやつらはそうは思ってないみたいだけど」
『墓を見なかったのか』
「見たけど……でもあそこには居ないんだろ?」
『誰に何を聞いたのかは知らないが、墓がある以上はあいつは死んだことになってる』
それきり海は口を閉ざして暗い空を見上げた。何を考えているのだろうと覗き見たが、相変わらずの無表情では何も感じ取れない。
「いつも一人でいるの?」
『……もう話すことは無い。外に出ろ』
「もし良かったらさ。俺たちと一緒に来ない?銀さんの代わりにはならないかもしれないけど、外にいるヤツらと一緒に万事屋を再結成しようかと思って──」
『死にたいのか?』
「あ……」
寝転がっていた銀時の横顔スレスレに突き立てられた刀。怒りを滲ませた目で海は銀時を見下ろしていた。
『銀時の代わりだ?ふざけるな。アイツの代わりなんか出来るわけない』
「(あっ……あれは……)」
ちらりと見えた海の左手。その薬指には銀時が贈った指輪がしっかりと嵌められていた。
「なんだ……ちゃんと持ってるじゃねぇか」
忘れることなく身につけてくれている。例え自分が死んだとしても海の左手はずっと独占しているみたいだ。それがとても嬉しくてつい口元が緩んでしまった。
それがダメだったのか、銀時は怒り狂った海の手によって屯所から投げ飛ばされた。
「何してんのよアンタ」
「いや、これは色々とありまして」
「色々ってなんだ。アンタ海さんに何言ったんだ」
「何も言ってないと思うんだけどね。ちょっと笑ったら怒らせちゃったみたいで、うん」
「それで外に放り投げられるなんて馬鹿じゃないの?」
「ははは……」
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