第264幕
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スナックで酒と夕飯をご馳走になった銀時はそのまま二階へと上がった。
万事屋の看板は取り外されて中にしまわれている。暫く誰も出入りしていなかったのか部屋の中はホコリが積もっていた。
「聞きてぇことがある。白詛って一体なんだ?一体江戸に何があった」
「全てを変えてしまった元凶。江戸を中心にして突如、世界中に爆発的に広まった殺人ウイルス。感染者は半月を待たずに確実に死に至る。対処法は一切なし。発生源も感染経路も不明、全身の毛髪から色素が抜け落ちるその症状から白い呪い。白詛と恐れられる謎のウイルスよ。唯一白詛から逃れる術は逃げることだけ。金のあるやつは皆この地球を捨てていった。残ったのは行くあてのない貧しい連中と治安の緩みを利用するゴロツキども。あとはケツまくって逃げんのが性に合わない頑固者達だけってわけ」
「(じゃあ俺のいた世界にこれがもうすぐに……)」
五年後でこの状態になっているのなら元の世界の方はもう猶予がないはずだ。なんならもう既に病気は出ていたかもしれない。
「さっき下のバ……お登勢さんから聞いたけど、桜樹さんが白詛と何か関係してるって」
「……関係してるんじゃない。海は特殊なの」
「特殊?」
「白詛が蔓延してから海が幕府に狙われるようになった。でも海が白詛と関係してるわけじゃない。幕府は違う理由で追ってるの」
「それってどういう理由なんだ」
もしかして海が白詛の感染源などを知っているのかと思ったがどうやら違うらしい。それとは別に何か理由がある。幕府に追われている理由を神楽に聞くも、彼女はじっと銀時を見るだけで話そうとはしなかった。
「白詛の話はもういいだろ」
外から聞こえた新八の声。
「どんなに願ってもあの日は帰ってこない。あの人のやり残した最後の仕事は俺が引き継ぐ。白詛は必ず俺が叩き潰す。そして海さんも護る」
「新八……」
「貴様もここが危険なことは分かったはずだ。墓参りが終わったらさっさと消えることだな」
それだけ言って新八は歩き出す。その背中へと銀時は声をかけた。
「俺なら時を返せるといったらどうする?」
こちらを振り向いた新八は銀時に向けて鋭い視線を送った。
「そんな恐ぇツラすんなよ。もしもの話さ」
「戯言に付き合ってる暇は無い」
「俺から言わせりゃお前のやってることも立派な戯言さ。意志を継ぐだか知らねぇが、こんな残骸の星護って一体どうなるってんだ」
「確かに失ったものはもう返らない。でも銀ちゃんはきっと帰ってくる。千鳥足でゲロ吐き散らしながらきっと帰ってくる。その時この星に誰もいなくなってたら酔いつぶれたバカに誰が毛布かけるのよ」
「ここは俺たちとあの人が出会った星だ。俺は万事屋の故郷を万事屋であることを捨てるつもりは無い」
「そうか。そいつを聞いて安心した。頼まれれば何でもやんのが万事屋だ。当然俺の依頼も聞いてくれるよな」
銀時の言葉に新八と神楽は真剣な顔付きになる。これならきっと二人は手を貸してくれるはずだ。
「俺ともう一度、万事屋再結成してもらえるか?」
「「はあ?」」
「何わけわかんないこと言ってんのアンタ!なんでアンタみたいなのと!」
「寝言は寝て言え!」
「銀さんのやり残した仕事をやり遂げたいんだろ?俺なら力になれるって言ってんのさ」
「そんなの海が認めるわけないじゃない」
「なら認めさせればいいんだろ?」
「あの人が銀さん以外を認めるわけない」
無理だと何度も繰り返す二人に銀時はニヤリと笑った。
「ここで言い合うより本人に聞く方が手っ取り早いだろ」
「そんなこと言ったって海は何処にいるのか分からないのよ」
「特定の場所に居ないってことか?」
「あの人は銀さんを探し続けてる。最近になって江戸で見掛けるようになったんだ」
「それなら探せば見つかるじゃねぇか」
「そんな簡単に言うな。あの人を探すのは砂浜で定春の毛を探すくらい難しいんだぞ」
「意外と簡単に見つかるかもしれないだろ」
江戸がこんな状態になっているのであれば行ける場所なんて限られている。海が行きそうな場所を手当り次第行ってみればいい。
「灯台下暗しってな。お前ら真選組の屯所には行ったのか?」
「あそこは封鎖されてるのよ」
「封鎖?なんでまた」
「局長である近藤さんが捕縛されたからだ」
「は?捕縛?」
「いつものことよ。姉御をストーカーしてて捕まったの」
「懲りねぇ野郎だな……。じゃあ、屯所には一切入れないのか?」
封鎖されているなら当然門は閉まっているだろう。それならいくら海でも中には入れないはず。
「いや、アイツなら入りそうだな」
門が閉まっていても別の場所が開いていれば入れる。確か桂が屯所に忍び込んだ時に抜け穴を作っていた。それについて以前、海が愚痴を零していたのを思い出した。その抜け穴がまだ健在だったとしたら。
「まずは屯所からだな」
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