第254幕
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「アイツと出会った時から強いやつだなと思ってた。トシの野郎も俺と同じで、何度も海に手合わせを申し込んでよ。その度に返り討ちにされてた」
「ふーん」
「一度だけ、海と剣を交えたことがあってよ」
その時を懐かしむように近藤は空を見上げるが、その目はとても懐かしんでいるような目ではなかった。
「ありゃバケモンかと思っちまったよ」
「バケモンねぇ。あんたらも大概だと思うけど」
「トシや総悟も似たようなところがあるが、海は違う。いや、俺らと全く違う。剣の流派が違うとかそんな生易しいもんじゃねぇ。あれは……」
死に急いでいるように見える。
そう言われて銀時はおちょこの中身を睨むように見た。
「なりふり構わず突っ込んでくる海をどうやって止めたらいいのか分からなくてよ。結局、トシと総悟が間に入ってくれたから止められたんだが……」
「そもそもなんでそんな事してんだよ」
海のタガが外れるなんてことは滅多に起きない。あるとしたら誰かが傷ついて倒れているとき、または……。
「毎日稽古してるトシや総悟を簡単に倒しちまうなんて興味が湧くじゃねぇか。だから試しに俺もやってみようってなってよ。最初のうちは簡単にいなされてるだけだった。それが段々と本気になって、海の俺を見る目が変わって」
「火ぃつけちまったのか」
「みたいだな。そのあとはよく覚えてねぇ。気づいた時には俺は傷だらけで、周りのやつらに介抱されてた」
戦いに楽しさを見出してしまう海の癖。強い者とやり合うとタガが外れる。どれだけ声をかけたとしても止まらず、海は相手の命が尽きるまでひたすら刀を振り続ける。
狂っていると言われても仕方ない。銀時も何故海がああなってしまったのかはわからない。戦争に巻き込んでしまったせいで海は力をつける事に固執した。
銀時や高杉の目を盗んでは単身、敵地に飛び込んでいくようになり、そんなことを繰り返しているうちに誰よりも強くなって、そして狂っていった。
誰かを護るために手に入れた力は誰かを殺すための力になった。己の力を試すために天人に喧嘩を売り、気づいた時には辺り一面真っ赤。
その真ん中で笑う海は近藤の言う通りバケモノだ。
「よくそんなんで海を追い出さなかったじゃねぇか」
「一度仲間だと決めたやつは何があっても追い出さねぇよ。周りのヤツらは海を追い出せって言ったが、俺は海のことを信じることにした」
「信じる?」
「ああ。こいつはきっと護るために力を使えるようになってよ」
そう言って近藤は酒を一気に飲み干して笑った。
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