第254幕
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しんと静まり返った屯所に銀時は松葉杖をつきながらやってきた。
大通りでは亡くなった将軍の葬式が行われているというのに銀時は近藤から呼び出されていた。
「ええい!おお!ええい!おお!」
静かな屯所の道場から聞こえてきたのは近藤の声。
「ええい!おお!」
「太刀筋に迷いが見える。犬のお巡りが迷子の子猫そっちのけで迷ってたら世話ねえや。稽古つけてやろうか?今ならこいつでも勝てそうだ」
松葉杖を掲げて笑うと、近藤は顔を逸らして断った。
「へッ、遠慮しとくぜ。年中迷子のはぐれ雲の行き先はお巡りさんにも分からんさ」
「少なくともシラフじゃこんなムサい所に迷い込まねぇよ。一体何の用だ。他の連中はどうした?」
局長を一人残してあとの隊士たちはみな出払っている。いつもうるさい土方もそれに付き合っている海もいない。先程、海の部屋を覗いて見たが本人どころか刀もなかった。
「さあな、葬式にでも出てんだろ?俺にゃ顔出す資格はねぇからな。だが、ちょうどいい人払いになった。あの時のてめーらへの報酬まだだったろ。まあアレだ。こんな時じゃなけりゃ伝説の攘夷志士と真選組局長が差しで飲む機会なんざねぇ。一杯付き合えよ、白夜叉」
差し出されたおちょこを手に取って近藤の横に腰を下ろす。注がれた酒を見つめていると、不意に海の声が聞こえた気がした。
「普通、ケガ人を酒に誘うか。こんなところ海に見られたら怒られるだろうが」
痛み止めやらなんやらの薬を飲んでいるのに酒を飲むなんて考えられないと怒られそうだ。たった今、そのイメージが浮かんで、居もしない海の声の幻聴が聞こえたのに。
「んなこと気にしてたら生まれた時から頭に大ケガ負ったお前は一生飲めねぇだろ?それに今ここに海は居ないんだから大丈夫だろ。多分」
「多分ってなんだよ。アイツがふらっと帰ってきたらどうするつもりだ。これ全部てめぇの顔に投げつけるからな」
「そうしたら海に言いつけてやるから。任せろ」
「何を任せろって言うだ」
この男に任せられるようなことは無い。しかもそんなことを気にするなといいつつ海に告げ口する気なのか。
「アイツらなら暫くは帰ってこないから大丈夫だ」
「いや、海は帰ってきて欲しいんだけどね」
ゴリラと二人きりで飲むくらいならば、海がいた方が浄化される。病院を退院してから海とは会っていない。将軍が殺されたことで仕事が増えてしまったのか、新八と神楽も海と会えなくて嘆いていた。
「そういや、お前に聞きたいことがあってよ」
「あ?」
「海のことなんだが」
「……なんだ」
ぐっと押し黙る近藤を横目に酒を煽る。最近、胃がキリキリするような話題が多いなと俯いた。
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