第253幕
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「海」
暫く泣いた後、銀時に呼ばれて顔を上げた。
「お前、俺の事……嫌にならねぇの?」
『なんで?』
「なんでってそりゃ……」
『先生を斬らざるをえない理由があったんだろ?仕方ないとは言わないけど……』
銀時は松陽を斬った理由について話していない。言い訳になるから言わないつもりなのだろうが、銀時の性格を考えれば自然とわかる事だ。
「それは……」
『このこと晋助も桂も知ってるんだよな?』
「知ってる」
『ということはその場に居たってことだろ?人質にでもされたか?』
「なんで分かんだよ」
『そうじゃなきゃ斬らない。てか、銀時なら周りにいる奴ら全員殺すだろ』
自分だったらそうしてる。でも、そうしなかったということは銀時一人ではどうにも出来ない状態だったということ。
『やっぱ早々に潰しておくべきだったなぁ』
「海!お前まだそんなこと……!」
『銀時たちをそんな目に合わせたヤツらを許せると思う?先生を弟子の手で殺させるような……そんな性根の腐ったやつらを』
今まで何も知らずにアイツらの下で仕事をしてきたのが馬鹿らしく思えてくる。この事を知っていれば、将軍が暗殺されるよりも前に幕府の壊滅を、天導衆の皆殺しを行っていた。
確かに晋助がああなってしまった理由もわかる。銀時に対して恨みを抱え、海が真選組に居ることを許さなかった気持ちが。
『もういいや、とまでにはならないけど。そんなことするよりお前のそばにいる方が大切だわ』
「えっ……え?」
『全部話したからそれで終わりにはならないだろ。俺が知った所で何かが変わるわけじゃない。銀時が背負ってるものが減るんじゃないんだから』
これからは銀時を支えていく。辛いことも悲しいことも分け合って。
『だから次から話して欲しい。ちゃんと話聞くから。もう一人で背負わせないから』
「海……」
『銀はすぐ一人で抱え込むから。心配なんだよ』
「それはお前も同じだろ。西ノ宮の時だって……」
銀時に一切話さなかった。話す必要は無いと思って、何も言わずに処刑の日を迎えた。終わったあとに駆けつけてきた銀時があんな悲しい顔をするのであれば話しておけばよかったと。今ではそう思う。
『うん。次はちゃんと話すよ』
「約束しろよ?もう一人で決めんな」
『ん、わかった』
「ほら」
『え?』
「指切り」
差し出された小指。早くしろと急かされて海は己の小指を絡める。
「指切りげんまん嘘ついたら針千本のーます」
『子供かよ』
「いいだろ。昔はよくやったんだからよ」
『昔の話だろ。今はもう大人なんだからこんな約束の仕方しなくても』
「こっちの方がいーの!文句言ってないでちゃんと約束守れよ?」
『わかってるって。それはお前もだからな?』
「へーへー」
『なんだその返事。人が優しく言ってやってんのに』
「逆に怖えよ。あんな言い方、普段使わねぇだろ」
『しょうがねぇだろ。詰めるような言い方したら話しづらくなるだろうが』
人が気をつかってやったのにと文句を口にすれば、銀時はそんな気は要らないと言い放つ。
「ったく……こんなんだったら早く話しとけば……」
『本当だわ。まさかお前、俺が離れるとでも思ったのかよ』
「……少し」
『はぁ……。離れるわけないだろ。離れられるわけ……』
「……なんか照れるんですけど」
『どこに照れる要素があるんだよ』
ほんのりと顔を赤く染める銀時に引きつった笑みを浮かべる。
その後、ベラベラと余計な話をしながら見舞いの品の果物を銀時に食べさせて帰った。
屯所で茂茂が死んだと聞かされるとは思わずに。
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