第253幕
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『将軍、今頃どうしてっかね』
「さあ……のんきに団子でも食ってんじゃねぇの?」
『それなら良いけどよ』
一連の騒動から国は変わった。将軍は結局、徳川喜々となり茂茂は江戸から離れることとなった。とはいえ、茂茂は全てを諦めたわけではない。
この国を天導衆と喜々の好きにはさせまいと、京へと移って力を蓄え政権を作ることを選んだ。それがどれだけ難しいことだとしても、茂茂はやり遂げると誓った。
「ここに居ていいのかよ」
『俺たちの仕事があると思うか?』
「そりゃそうか」
茂茂が居なくなった今、真選組はほぼお払い箱のようになっている。徳川喜々が茂茂の息がかかった真選組を野放しにしておくはずがない。いつになるかはまだわからないが、きっと真選組は解体されるはずだ。
「海」
『ん?』
ずっと病室の窓を見ていた銀時がこちらへと目を向ける。
「話……あるんだけど」
『うん』
「その……」
『うん』
「高杉が言ったことは……」
言葉を選んで話そうとする銀時に海は頷くだけで急かそうとはしなかった。やっと銀時が話してくれる。ならば銀時が全部話終わるまでちゃんと聞こうと。
「俺が……松陽を……斬った」
『……うん』
「悪い。俺がアイツを殺したんだ」
『そっ、か』
重たい沈黙が病室に流れる。銀時は目をさ迷わせて海を見るのを怖がった。
『それもうちょっと早く聞きたかったな』
責めているように聞こえないように優しく呟く。
『一人でずっと抱えてたの?』
「俺が……」
『うん。銀時が先生斬ったのは分かった。それずっと一人で背負って、俺に隠してたんだろ?』
海の問いかけに銀時は何も答えない。その代わりに強く手を握りしめていた。
『ごめんな。何も知らなくて。銀時一人に押し付けて』
「海は何もっ!」
『その場にいたら……俺が代わりにやったのに』
「何言って……」
『銀時だけに任せられるわけないだろ?銀時に……そんな重たいもの背負わせられない』
握りしめられた手を掬い上げ、祈るように両手で包み込んだ。
『ずっと、一人で背負わせてごめん。気づいてやれなくてごめんな』
握りこまれていた手が段々と緩められ、海の手を掴んだ。銀時の方へと目を向けると、目に涙を溜めながら天井を見つめていた。
「黙ってて……ごめんな」
『いいよ。言いづらかったよな。俺もしつこく聞いてごめん』
互いに何度も謝りながら静かに泣いた。松陽がこの世にもういない事実と、銀時が一人で背負ってきた苦痛が一気に押し寄せてくる。これ以上の言葉はもう必要ない。
ただ、銀時の手を握りながらさめざめと涙を流した。
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