第253幕
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出口はもうそこ。駆け出していく新八に待てと声をかけたが、海の言葉を無視して飛び出していく。
先に外に出た新八はこちらを振り返ることもせずにその場に立ち尽くした。
『新八!先に行くなって言っただろうが!何があるかわからねぇんだよ』
「海さん……あ、あれ……」
将軍たちを連れて漸く海も外へと出た。洞窟の中を走っていたのはものの数十分くらいだというのにやけに外の光が眩しく感じる。
目を細めながら新八が見ている方へと目を向けると、そこにはずらりと錫杖を持った奴らが立っていた。
「ご苦労であったな。こたびの働きまことに大儀であった。よくぞ茂茂公を賊から護り抜いてくれた。そなたらこそ真実の忠臣たちだ」
『新八、下がれ』
聞き覚えのある声が船から聞こえ、咄嗟に新八の前に立った。
「あいつら……」
『分かってる。だが、今ここで刃向かうような真似してみろ。全員の首が飛ぶぞ』
新八の言いたいことはわかる。それでも怒りを抑えろとしか言いようがない。
「そなたらの役目はこれで終わりだ。茂茂公の身柄は我々が保護しよう。安心せよ、後のことの一切は我々に任せておけばよい」
「そうは問屋が卸さねぇ。敵対派閥を潰そうと今までだんまり決め込んでた連中が今更将軍を保護する?一橋派の次はアンタらの言うこと聞かねー将軍まで何とかしようってんじゃねーのか」
「一橋派を潰す?何のことを言ってるか解せぬが、我々は一橋公に恩こそあれど敵対した覚えは無い。茂茂公、貴殿も彼に感謝すべきだ。覚えているか?貴殿が将軍職を辞そうと提出した解官詔書。あの時は後を継ぐに相応しい者もなく保留となっていたが、こたび国の執政を執るに相応しき人物を得、天子の許しが下りた。彼が次代征夷大将軍、一橋喜々改め徳川喜々公だ」
天導衆の背後から姿を現したのはボロボロになりながらも車椅子に乗ってやってきた喜々。
茂茂が将軍を下りると言ったのは確かだ。その穴埋めとして喜々が将軍になる可能性もあった。だが、余りの急展開すぎて頭が追いつかない。
そもそも何故、天導衆が喜々と手を組むことにしたのか。彼らほどの者であれば喜々がやってきたことは全て分かっていたはずだ。幕府の壊滅を望んでいる鬼兵隊と手を組み、宇宙海賊として名を馳せている春雨さえ手中に収めようとしていた男を。
考えられるとしたら。
『晋助を……鬼兵隊と春雨の両方を裏切ったのか』
「えっ……」
考えられるとしたらそれしかない。天導衆から見ても鬼兵隊と春雨は何とかしたい消したいと思っている組織。その両者を叩くとしたら……今が好機だろう。
「殺せ。私は天下の大将軍であるぞ。私を愚弄した連中を……私の邪魔をする連中を一人残らずみんな殺せー!」
『おいおい、あんなんで将軍が務まると思ってんのかよ』
気に入らなければ全員殺す。そんな理屈が通るはずがない。あの男に国を任せたら破滅へのカウントダウンが始まる。
「海さん!どうしたら……」
『どうするもこうするも……』
周りは敵だらけ。しかもあの服装は以前見た事のある連中。朧という男がここに居ないだけマシなのかもしれないが、彼らの使う武器や身のこなしは簡単に倒し切れるような技量ではない。
かといっておいそれと将軍を差し出すわけにもいかない。
『(どうすんだよこれ)』
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