第252幕
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「海!?」
「おやおや。どうしたんですか?また怖い夢を見ましたか?」
涙と鼻水で顔がぐちゃぐちゃになった頃、松陽と銀時がひょこりと顔を出した。その後ろには何故か晋助と桂の姿もある。
『ぎ……と……』
「どうしたんだ!?まさか誰か来たのか!?」
バタバタと走り寄ってきた銀時はすかさず海のことを抱きしめる。
「海、もう大丈夫だからな」
『ぎん、ぎん……!』
「大丈夫だから」
「ここに誰か来たんですか?」
銀時にしがみつきながら海は頭を横に振る。
『誰も来てないよ』
「じゃあなんでそんな泣いてんだよ。近所のクソガキ共にいじめられたとか、役人共が来たとかじゃないのか?」
『違う……。起きたら二人とも居なかったから……だから』
「ああ、置いていかれたと思ったんですね」
松陽の言葉にこくりと頷くと、海を抱きしめている腕に力が込められた。
「そんなことするわけねぇだろ……海を置いてどこに行くって言うんだよ」
『だって、銀も先生も居なかったじゃん!お昼に僕があんなこと聞いちゃったから……だから僕のこと要らないって思ったのかと』
「昼?なに?なんの話?」
「どうやら海も知ってたみたいですよ。噂話」
「はぁ!?まさかあいつら海に言ったのかよ!」
「いえ、話をしているところを聞いてしまったみたいですね」
何も心配は要らないと二人は言ったが、それでも不安は残る。
『どこ……行ってたの?』
「それは……」
「三人で遊びに行っていたんですよ。だから連れ戻しに行ってました。夜遊びなんて百年早いってね」
『夜遊び?』
「そ、そうだよ……!高杉が遊びに行きてぇってうるせぇから!」
「なんで俺のせいになってるんだ!お前だって乗り気だっただろ!」
「まぁまぁ、落ち着いて。ここは海の為に」
「ていうか、お前もそんなことで泣いてんじゃねぇよ!」
ビシィ!っと晋助に指さされ、海はビクッと震えて銀時の腕の中へと逃げる。
「おい、てめぇ海をビビらせてんじゃねぇよ!」
「こらこら。二人とも真夜中ですよ。静かにしてください」
「でも、コイツがっ!」
「お前が言い出したんだろ!」
「二人とも」
静かにしなさい。と松陽は二人の頭にゲンコツを落とした。
「海、部屋に戻って寝直しましょう。君たちもちゃんと寝るように。いいね?」
「「はい……」」
「今日は一緒に寝ましょうか」
『うん!』
「はぁ!?ズリいぞ松陽!!」
頭を押さえて蹲ってた銀時がガバッと顔を上げて吠える。松陽はゆっくりと振り返って、拳を握りしめた。
「銀時」
「ぐっ……」
「静かに寝なさい」
「ぐうっ!!」
銀時はそれ以上文句を言うことが出来ず、悔しそうに呻いた。その顔を見た松陽は満足気に笑う。
「さあ、行きましょうか」
『はーい』
そのあと、悪夢を見ることはなく朝を迎えた。
松下村塾も変わらずあった。ただ、その日から晋助と桂が来るようになってもっと賑わうようになった。毎日が楽しくて幸せの日々。
あの日が来てしまうまでは、だが。
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