第252幕
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『銀!こんなことしたらまた先生に怒られちゃうよ!』
「大丈夫だって。海が言わなきゃバレねぇよ」
家の近くにある神社の木に登り、銀時はそこで昼寝をしようと目を瞑る。銀時に引っ張られるがまま海も木の上へと登らされたのだが、いつ落ちるかと不安だった。
『やだ、もう降りたい……』
こんな不安定な場所にいつまでも居たくない。ここから落ちたらきっと痛いだろうし、松陽にも怒られてしまう。焦りと恐怖で段々と涙目になっていき、鼻もずびっと鳴らす。
「ったく、木登りぐらいで泣くなよ」
『だって、こんな高いとこ怖いいい』
「だーっ!泣くな!ほら、こっち来いよ」
手を引っ張られて銀時の方へと引き寄せられる。大丈夫だからと背中を撫でられて僅かに安心した。
『銀時、もあここ降りようよ……』
「昼寝すんのにここは丁度いいんだよ」
『良くないよ。寝るんだったらお布団の方がいいもん』
「それじゃ松陽に叩き起されるだろ」
『僕そんなことされたことないもん』
昼寝をしていて松陽に叩き起されたことなど一度もない。むしろ優しく寝かしつけてくれるのだ。
銀時が起こされるのはいつもイタズラをした後に寝るからに違いない。この間も近所の友達を殴ったとか言っていた。だから松陽はいつも銀時を叩き起すのだ。
『もう降りようよ。怖いよ』
「仕方ねぇな……」
やっとここから降りられる。ほっとしたのもつかの間、銀時と海以外の子供の声が下から聞こえ身体がびくりと跳ねた。
『銀、』
「静かにしてろ」
こくんと小さく頷いて銀時にしがみつく。
また喧嘩になるのだろうか。そう思ったら怖くて仕方なかった。
海と銀時は度々、近所の悪ガキに喧嘩を吹っかけられるときがある。大抵は銀時がやり返して終わるのだが、海はそのときが一番怖くて嫌だった。
銀時を悪者のように見る目も、自分のことを蔑む言葉も見たくないし聞きたくない。その度に銀時が怒って悪ガキに殴り掛かるのも。
その背中は何度も見た。海を守ろうとして庇う背中を。
声も見た目も全く違うのに悪ガキたちが父親と被って見える。それがとても怖くて抵抗することも出来ない。そんな海を銀時はいつも守ってくれた。
大好きだった母親と同じ背中。
でも、いつか母のように銀時も居なくなってしまうかもしれない。海のことを置いてどこかへ行ってしまったら。
『ぎん……!』
「うおっ……なんだよ」
銀時が居なくなってしまわぬように強くならなくては。
そう思って銀時のことを強く抱き締めた。
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