第249幕
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「新八っ……!」
現れた夜兎たちから将軍を護る為に銀時と神楽はその場に残り、新八は将軍を連れて崖を降りていく。だが、そう簡単に二人を逃がしてくれる訳もなく、夜兎たちは逃げていった新八たちを追っていった。
「やっぱり一筋縄じゃいかねぇ……こいつら……」
力では叶わない。同じ人間の見た目をしているのに銀時とは全くもって力量が違う。天人と戦うことは何度もあったが、その中でも夜兎は手強い。
「しょっ……将軍様ー!」
下から新八の情けない声が響く。普段ならそんな声を出すなと言いたいところだが、今回ばっかりはそんな事を言っていられない。
海に剣術を教えてもらったとはいえ、相手は人間ではなく天人。新八一人で三人の天人を相手するのは不可能だ。
それでも新八は将軍を護ろうと盾になる。そんな二人を見つめることしか出来ない自分に歯噛みして。
「あっ!」
「オイ、気をつけた方がいいぜ……何でもこの里にゃ侵略者を阻む」
「こわーいワナがあるらしいから」
「近藤さん!土方さん!」
降りていった二人の夜兎は近藤と土方によって止められる。だが、残った一人が将軍に向けて傘を振り下ろそうとしていた。
「将軍様!!」
迫り来る傘から逃げるすべは無い。最早これまでかと誰もが思った時、降りていった夜兎の背中に何かが乗った。
『あ、悪い。下に降りるのに手頃なものがあって』
「海さん!!!」
夜兎の身体を下敷きにしながら崖を滑り落ちていくのは紛れもなく海だった。近藤と土方が顔を出した抜け穴から飛び出てきたのだろう。
「海……」
「海来てくれたアルか!」
新八と将軍の安否を確認した海は銀時の方を見上げて頷く。それを合図に銀時たちも下へと降りた。
「やれやれ、ようやく忠臣のご登場か。落とし穴から参上とは優雅だねぇ」
「そうでもねーさ。岩の隙間に光が見えた気がしたが……まだまだ光は遠そうだ」
『あんだけ密集してるとなんか別のもんに見えてくるな』
「別のもん?」
『いるだろ。夏場の冷蔵庫の裏に』
黒いヤツが。
「やめてくれる!?もうそれにしか見えてこないから!」
『アイツらどんだけ殴っても死なねぇじゃん。しぶとさは似てると思うけど』
「そりゃそうかもしれないけど!てか、黒い服着てるのがそう見えるならお前もそうだからね!?」
黒いコートを羽織っている海も夜兎と変わらない風貌をしている。なんなら夜兎たちの間に紛れていても誰も気づかないだろう。
『あんなゲス共と一緒にするな』
ギロッと海に睨まれ、銀時はそれ以上の言葉を飲み込んだ。ここに来るまでの間、どうやら夜兎の相手をしていたらしく、よく見ると顔に点々と血の跡が残っている。
「だから一人でフラフラするなって言っただろうが」
『ワナに掛かった近藤さんたちが悪い』
「そりゃそうだけども」
飛び散っている血を拭ってやると、海は夜兎のいる方を見上げた。
『どうするんだこの数。分かってるとは思うけど、そこらの攘夷浪士どもとはわけが違う』
「どうもこうもねぇ。相手が誰だろうがやらなきゃやられる。それだけだ」
「どうやら今や僕たちが将軍様を唯一護れる最後の忠臣みたいですからね」
「冗談きついぜ。よりにもよって最後に残ったのがこれか……面接からやり直してぇ気分だ」
「そのまま返すアル。将ちゃん護って討ち死にならまだしも」
このメンツでの心中だけは御免こうむる。
『……いや、俺は死ぬ気ないけど』
「海くん、ここは話に乗ってあげようね?ほら、皆固まっちゃったから。なんでいつも変なところで脱線すんの?」
『別に脱線なんかしてねぇよ。要は将軍護ってお前らも生かせばいいんだろ?上等だ。何も無いよりかはそっちの方がスリルがある』
「俺らの命なんだと思ってんの!?」
夜兎を眺めながら鼻で笑う海に引きつった笑みを浮かべる。
『護り抜けばいい。そうしたら全部終わるだろ』
ふざけたことを言っている。そう思ったが、海の顔は真剣で揺るぎない決意だった。
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