第248幕
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「ご覧のとおりぞよ。将軍の安全はわしが保証しよう。後は任せて手を引くぞよ」
ここは数多の罠が仕掛けられている。だから心配はないと百地は海たちに帰れと言った。
「私たちがやらないで誰が将軍を護るネ!」
「敵は一国家に匹敵する武力をもった連中ぞ。護る……そんなハンパな考えでは将軍は再び死ぬ。そなたらにできるか。あの服部の小僧のように将軍を殺すことが」
「えっ……どういうことですか」
「わしがあの男と出会ったのは春雨に蹂躙されてからひと月後……既に情勢を探っていたヤツは知っておった。敵は初めこそ一橋派の過激攘夷浪士だったが、今では抗いがたい巨大な勢力に膨れ上がっていること……」
百地の言葉を聞いた銀時はちらりと海を見る。将軍の護衛を頼まれたあの日、海の憶測を思い出したのだろう。
一橋は晋助と手を組んでいる。そして春雨とも。
百地の言う通り、万事屋や真選組、お庭番衆だけでどうにかなるような相手では無い。そもそも頭数が足りなさすぎるのだ。
『(ああ、まるで昔みたいだな)』
多勢の天人らを相手に海たちが戦って敗れたのと同じ。今度は仲間だった奴からの奇襲を受けている。
相手はこちらを完全に潰す気出来ている。将軍も江戸も何もかも。全部まっさらにして新たな国でも作ろうとでも言うのか。
『馬鹿だなぁ。そんな事したって何も変わりはしないのに』
今、この国が良いかと問われても答えられない。でも、全部壊して新たに作り直したって変わらない。
だからこのぬるま湯に浸り続けてればいい……自分に害が無いのであればそのままで。己の信条や大切なものの為に国相手に喧嘩を売るなんてこともうやることは無い。
そう思っていた。
『晋助は……何を思って将軍を暗殺しようって思ったんだろうな』
「さぁ。アイツ馬鹿だから」
『だからって敵対してた天人と手を組んでまでこの国を滅ぼそうって思うか?』
「……さぁ、な」
『晋助を駆り立ててるものがある。天人を味方につけ、一橋に手を貸し、そして今は将軍を暗殺しようと躍起になってる。それほどこの国に恨みがあるってことだろ』
銀時は何も言わずに俯く。
『その恨みってどこからきてるんだか。元を考えれば、一人にしかたどり着かないんだよ』
「……一人って?」
『先生は誰に殺られたんだ』
海の問いに銀時はあからさまに狼狽える。この質問は今回を入れて二回目だ。一回目は吉原の時。その時は待って欲しいと言われ、素直に待ち続けた。
でも、今回は待たない。
『銀時。もう大分待たされたんだけど』
「それは……」
『銀時と晋助、それから桂で何を隠してるんだよ』
海が居なくなったあと、三人は散り散りになった。銀時は万事屋を営んでいるし、桂は攘夷浪士立ちを引連れてテロリストになった。晋助に至っては見つけたら即刻斬り伏せろとまで言われるほどの悪党。
同じ道を歩いていたはずなのにいつしか皆違う方を向いて歩いている。それに関しては文句を言える立場では無いのを海が一番分かっている。幕府お抱えの真選組に所属しているなんて知られたら過去の仲間たちに斬り殺されても何も言えない。
だから銀時たちがやってきたことに関しては何も言うつもりは無い。でも、知る権利くらいはあるんじゃないかと思う。
『銀、頼むから教えてくれ』
「松陽は……」
絞り出すように先生の名を口にした銀時は苦しそうな顔で拳を強く握りしめていた。
.