『あれ。ウチにもくんねぇかな』


｢あんなもん要らないでしょうが！！｣


百地が打ったのはビーム砲。人を一瞬にして消し炭にするほどの威力を兼ね備えた武器なんて真選組にはない。あれ一台あればどんな攘夷浪士も倒せる。


『便利じゃないか？ボタン一つであれだぜ？』


｢やめときなさい。あんな物にロマンも何も無いから｣


『ロマン何かどうでもいい。実働性を言ってんだよ』


それでも銀時は必要ないと首を横に振る。


｢つうか何？お前全部知ってたの？｣


『いや、将軍がここに居ることはさっきまで知らなかった』


｢じゃあなんでこっちにいんのよ。ゴリラが言ってたぜ？海は別んとこにいるって｣


『本来はな。銀、服部全蔵って男覚えてるか？』


｢あー、痔持ちの｣


『痔？』


｢いんや、なんでもない。忍びの野郎だろ？そいつがどうした？｣


『そいつに船に乗るなって言われたんだよ。こっちの護衛につけってな』


将軍は船にはいない。本物の将軍は百地の元で保護されている。だから、海があの場で動いてたとしても意味はなかった。


それならば、本物の将軍がいるこちらの部隊につけた方がいい。そう思って服部は海をこちらへと寄越した。


万が一、陸上部隊が襲われて壊滅的被害を受けたとしても、真選組のトップと万事屋が居れば何とかなると。



『言われた時はなんだコイツって思ったけど、今思うとすげぇプレッシャー掛けられてたんだな』


｢期待されてんじゃねぇの？お前らなら護りきるだろうって｣


『服部に期待をされる程の信用はないと思ったんだが』


期待、というよりもこちらの部隊に敵の目が向くことはないと見越しての判断だったのかもしれない。服部が将軍の首を取ったという連絡は敵の方にも入っているはず。そうなれば散り散りになっている相手さんも将軍の首を確認しようと集まるはずだ。


そうなればこちらは手薄になる。


『俺そういうの無理』


｢何が？｣


『後先考えて行動すんのって難しくないか？』


｢海くんはすーぐ飛んでっちゃうからね｣


『鳩みたいに言うな』


｢そんなもんでしょ。なんかあればすぐどっかいくじゃん｣


『別にそんなことは……』


｢あるでしょ。海、絶対に俺から……ゴリラや多串くんから離れるな｣


ヘラヘラしていた顔から一変、真剣な顔で銀時は告げる。


｢高杉が関わってんのは分かってるだろ。だから、絶対一人で動くな｣


『……分かった』


また拉致されるかもしれない。銀時はそう言っているのだ。晋助に連れ去られていた間の記憶は今でもおぼろげだ。だが、薬を使われた自分は神楽や銀時に刀を向けた。桂にも傷を負わせている。


またそんな事になるのが怖い。


｢海、大丈夫だから｣


ぞわりと鳥肌が立ち思わず銀時の服を掴むと、そのまま抱きしめられた。背中を何度も撫でられ、大丈夫だと耳元で囁かれる。


『銀……』


｢大丈夫だから。俺が守る｣


『ごめん』


｢謝ることはねぇよ。気にすんな｣


優しく抱きしめられているうちに恐怖心は少しずつ溶けていく。暫く銀時の腕の中にいた後、海たちは忍びの里へと向かった。



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