第242幕
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『……斎藤の部屋ってどこだっけ』
副長室を出てから数歩歩いたところで海の足はピタリと止まる。
これまで斎藤の部屋に行ったことがないから場所が分からない。副長室や局長室であれば、目印となるものがついているのだが、隊長の部屋となるとそういうものはついていないのだ。かといって全ての部屋の襖を開けていくのも気が引ける。
『山崎』
「はい!呼びましたか?」
名前を呼べばどこからともなく出てくる山崎。普段はゴキブリみたいで気持ち悪いなと思っていたが、こんな所で助かるとは。
『斎藤の部屋に行きたいんだが……』
「三番隊隊長のですか?なんで急に?」
『土方が新入りの様子を見て来いってさ。なんか変な噂が流れてるんだって?』
「ああ……。あの新人さん一日中、三番隊の部屋の前で立ってるんですよね。指示があるまで部屋で待機してればいいって声掛けたんですけど、それじゃ遅くなるからって」
『へぇ。仕事熱心でいいんじゃねぇの?』
「良くないですよ!あれじゃパワハラと変わらないですし。最近そういうのうるさいからウチも気をつけないと」
『気をつけるところそこだけじゃねぇだろ』
その新人が桂だということにいつになったらここの奴らは気づくんだ。パワハラがどうのこうのという前に屯所に入り込んでるテロリストに気づけよ。
そっとため息をつきつつ、山崎に斎藤の部屋の場所を教えてもらい、海は桂の元へと向かう。
斎藤の部屋につくなり、部屋からアフロが飛び出していくのを見送る。中を覗けば、畳の上に転がっている湯のみの破片。そして頭から血を流している斎藤の姿。
『何やってるんだ』
声をかけても斎藤は狼狽えるだけで何も答えない。
『はぁ……。新人に殴られたのか?』
胸元から手ぬぐいを取り出して斎藤に手渡し、自分は転がっている破片を拾う。その間、じっと見られている気がしたが無視した。
『土方に新人の様子を見てこいと言われたから来た。問題があれば新人を追い出すけど……』
どうだ?という問いに斎藤は勢いよく首を横に振る。
『それは良くない方なのか、それとも大丈夫なのかどっちだ』
わたわたと慌てる斎藤。何かを必死に伝えようとしているのは分かるが、その何かが全く分からない。身振り手振りだけでは何も伝わらないのだ。
『いや、それじゃ分かんねぇよ。紙に書いてくれないか?』
斎藤が黙々と何かを書いている間、海は廊下の方へと目を向ける。その先に何故か万事屋一同。
『……お前ら』
今度は何をしたんだと睨みをきかせると、銀時は必死に違うと首を横に振った。
「……ZZZ」
『あ?ああ……』
横から聞こえた微かな声に海は視線を銀時から斎藤へと移す。渡された紙と謎の笑み。
『……斎藤、その顔は怖い』
血を流しながらニヤァと笑う斎藤に顔を引き攣らせる。無理に笑おうとしているのか、限界いっぱいまで口角を上げた顔は狂気に満ちていた。
『怖い』
「…………Z」
再度言うと、斎藤は大人しく顔を戻して布を上げる。
渡された紙へと目を落とすとそこには一言。
"大丈夫だと思います"
『(いや、大丈夫じゃねぇだろ)』
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