第241幕
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煎餅のバリバリ音が部屋に響く中、万事屋のチャイムが鳴った。
「オイ……ひょっとしてコレって」
何度も何度もチャイムが鳴り、その度に銀時たちは顔が青くなっていく。
「もう手遅れだったー!」
そっと部屋の戸を開いて玄関の方を見やると、そこにはチャイムを押し続ける謎の人影。頭の部分がモッサリとしているので、桂の言っていたアフ狼隊長なのかもしれない。
「あの若き日の鶴瓶師匠のような人影は……間違いない。アフロ隊長だ」
「いよいよヅラの正体に気づいて乗り込んできたアルか?」
「オイ、何とかしてこいよ。このままじゃ俺たちまでテロリストの仲間と勘違いされんだろーが。しかもここには海もいるんだぞ?お前だけならまだしも、アイツまで巻き込むんじゃねぇよ」
「何を言う銀時!俺たちは縮れ毛で繋がったアフロ兄弟ではないか!」
その言葉にプツンとキレ、銀時は桂の頭を蹴りつける。
「あれ?アフロの影が消え──」
『新八』
玄関から人影が消えたことによって脅威が去ったのかとホッと胸をなでおろしたところで不意に海に呼ばれて新八は振り返る。ソファで未だに煎餅を食べていた海は新八に向けて手を振った。
それはそこから離れなさいと言っているように見える。
「え?」
その直後、部屋にある窓が何者かによって蹴破られた。
「ぎゃああああ!裏から強行突破!?」
驚く新八と慌てて桂を隠そうとする銀時。ただ、海だけが静かにお茶を飲んで。
飛び込んできた斎藤は銀時の制止の声を無視して万事屋の中をウロウロと歩き回る。
「海さん!あの人、探しに来たんじゃ……!」
『いや……多分違うんじゃないか?』
「でも、それじゃあの人がここに来た意味は?」
何かを探すように動き回る斎藤を見て、海は煎餅を齧る。斎藤が玄関の方に行ったことで銀時は木刀を手にした。
「その辺にしとけよ。警察だか何だか知らねぇが、坂田家には坂田家の法律ってもんがある。これ以上、汚ぇ縮れ毛落とすならパイパンじゃ済まねぇぜ大将」
皆が固唾を呑んで見守る中、海は小さくため息をついてソファから立ち上がった。
『斎藤、便所はこっち。それと人様の家に上がる時は靴を脱げ。土足で人の家をウロウロするな』
桂が隠れている場所とは反対にある扉を指差してやると、斎藤は慌てた様子でトイレへと駆け込んでいく。
暫くした後、斎藤は何食わぬ顔でトイレから出てきた。
『借りたならちゃんと礼を言っとけよ』
海の言葉に斎藤は素直に頭を下げ、そのまま何事も無かったかのように万事屋を出ていった。
「え……いや、あの……海さん??」
『厠に行きたかったんだろ』
「い、言えばいいじゃないですか!!なんなんですかあの紛らわしいやり方は!!」
「極度の無口ってのは本当らしいな……海が話しかけてもいつもああなのかよ」
『俺が、じゃなくて誰が話しかけてもああなる。別に話たくないっていう感じじゃないみたいだけど。話す時はZZZZZZって言うし』
「いや、それ会話になってませんから。つか、途中で寝てませんか?」
そもそも斎藤に話しかける理由がない。朔夜みたいに一緒に書類をやるわけでもなければ、土方や近藤みたいに仕事の話をするわけでもない。斎藤とは担っている役目が違うから屯所で会うことも少ない。
たまに食堂で会って挨拶を交わす程度の仲でしかないのだ。
『悪かったな。あまり関わりがないとはいえウチの隊士にはかわりはねぇから。あとでちゃんと言っとく』
先程は頭を下げていたが、あの感じでは他でもやっていそうな気がする。そこんところはちゃんと注意しておかなければ。
「お前んところって変なやつしかいねぇのな」
『癖が強いのが多すぎるんだよ。別に全員が全員そうってことじゃねぇけど』
隊長格はずば抜けて癖が強い。そうでないと真選組をやっていけないのかもしれない。あんな荒くれの集団をまとめる為には真面目だけではやっていけないから。
『俺もその類に入るのか』
「海は違うから」
『俺もそれなりに性格的に問題あると思うが?』
「海の性格は可愛い方だから。しかもそれは癖とかの問題じゃないだろ?」
『それもそうか……?』
「うん。だから海は多串くんとかとは違うよ」
それならまぁいいかと納得。なんとなく土方や近藤らと一緒にされるのは嫌だった。彼らのことが嫌いというわけではないが、ストーカーとマヨラーと同じだと言われるのは癪に障る。
『あ、俺そろそろ見回りに行ってくるわ』
「もう行っちゃうアルか?」
『また来るよ。煎餅ありがとな』
寂しげに海の上着を引っ張る神楽の頭を撫でて、また来ると言い残して万事屋を出た。
『なんかまためんどくさい事が起こりそうな予感』
もう既に起きているのだが、これ以上に面倒なことが降り掛かってきそうな気がしてならない。
『仕事増やされんのは嫌なんだけどなぁ』
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