第232幕
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『なんでこんなにバイクがあるんだよ』
屯所の前にズラリと並んでいたのは旗を差したバイク。田舎のヤンキーが乗っていそうなそれは何十台も停めてあった。
『これ誰が使うんだ』
「見回りで使うんだよ海!ほら、お前もこれに着替えて攘夷志士を血祭りに──」
ギャハハハと下品な笑い方をする近藤を蹴り飛ばす。気づけば隊士たち全員が近藤と同じ格好をし、顔によくわかんないペイントを施している。
『まさか土方がやれって言ったのか?』
これでは警察ではなく暴走族じゃないか。
『山崎、土方の居場所は?』
「万事屋の旦那と橋で話してるみたいですぜ!」
ヒュー!なんて言いながら中指を立てる山崎の頭を土に埋め、海は土方たちがいるであろう橋へと向かう。
『何がどうなってんだよこれ。誰か説明してくれ』
少し寝てる間に一体何があったんだ。朝はまだこんなじゃなかった。たった数時間のうちに屯所の中は荒くれ共の巣窟と化している。
こんなことになった原因は土方だというのは分かってはいるが、あの土方がこの状態を許すわけがない。規律を重んじ、秩序を乱すものには切腹を課すあの男が。
自分で作った法度を破るなんて。
『なんかまたややこしい事になってる気がすんのは俺だけか』
たどり着いた橋の上では土方と銀時が胸ぐらを掴みあって何か騒いでいる。はたから見たらいつものやり取りに見えるが、話をよく聞いてみると少し違和感。
『おい、そんなところで何やってんだ。お前、屯所の中どうなってんのか分かってんのか?』
怒鳴っている土方の腕を掴んでこちらへと引きずる。
「あ?海?なに、もう起きたの?」
『起きたの?じゃねぇよ、お前会議ボイコットしたそうじゃねぇか。何やってんだよ。それにあいつらに何を言ったんだ』
「会議なんて必要ねぇだろ。あんな辛気臭そうなツラ、朝から見たくねえっての。硬っ苦しい事ばっかやってるから自由にやれって言ったんだけど?」
『その結果アレか』
海の後からついてきた近藤たちはゲラゲラ笑いながら攘夷志士たちを探しに行こうと土方を誘う。
「おい、海!どうなってんだアレは!今すぐ元に戻せ!!」
『俺が聞きたい。つか、なんでお前がこっちの心配してんだよ』
何故か銀時は様変わりした近藤たちを見てブチギレる。土方本人はなんてことはないという顔をしているのに。
『……お前らちょっとおかしくないか?』
「「え?何が?」」
『さっきから逆なんだよ。言ってることが』
「ぎゃ、逆って?何が逆なの?別に俺らは普通だけど?ね、ねぇ、銀時さん」
「そ、そうそう。別になんもおかしくないけど?なぁ、土方くん」
明らかに何かを隠していますという顔で二人は冷や汗をかきながら笑い合う。
『これ以上、めんどくさいことになるのはごめんだ。素直に白状しろ』
「だからなんもおかしくないって!おかしいのは海の方じゃないの!?徹夜のしすぎで頭バカになってんだよ!」
「そうだそうだ!お前、今週ずっと書類ばっかやってただろ!疲れてるんじゃねぇか!?」
『なんで今週、ずっと書類の処理をしていたことを"銀時"が知ってるんだよ』
じとりと銀時を睨むと、相手はピシッと固まる。
『お前らもしかして入れ替わってるんじゃ──』
ないのか。といい切る前に海の足元がグラついた。いつの間にか総悟と神楽がやり合っていたらしく、二人の攻撃のせいで橋が壊れた。
『は……はあぁぁぁ!?』
「海!!!」
ドボン、と川の中へと落ちる。流されながら必死に手を伸ばすが、水以外何もない。
『(やばい、死ぬ……!)』
そう思った時、誰かが海の身体を抱きしめた。薄れゆく意識の中で最後に見たのは黒一色。
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