第240幕
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『悪いことをしたらいつか全部自分に返ってくる、ねぇ』
「人様に迷惑かけずに生きろってこった」
『それは無理な話だろ。人間、誰でも誰かに迷惑掛けて生きてるんだよ。人に世話になった分、誰かを世話する。そういうもんだろ』
全てが終わった今、パトカーに寄りかかりながら白み始めた空を見上げていた。
街中を駆けずり回って探しだした老人は近藤に見守られながら事切れた。
老人を襲った闇金融のヤツらは全員捕まえ、今頃牢屋に入れられているころだろう。
「お前ならあれくらいの人数片付けられたはずだ。何でやらなかった」
『そこまで手を出す必要があったか?』
海が老人の元にたどり着いたとき既に暴行を受けた後だった。殴られて頭から血を流していても老人は男たちを強く睨みつけ、口元には微かに笑みがあった。
ここで手を出すわけにはいかない。何故かそう思ってしまった。目の前で殺されそうな人がいるのにも関わらず海は手を出さずにただ見ている事しかしなかった。
「お前でも冷酷になることもあるんだな」
『そうじゃねぇよ。ただ……』
「ただ?」
『……なんでもない』
自分が助けるべきではないと思った、と言ったところで土方は首を傾げるかもしれない。
『それより葬式とかどうするんだ?こっちでやんのか?』
「その準備は進めてる……が、いかんせん罪人だからな。簡易的なものしか出来ない」
『そうか』
死んだからといって罪がなくなることはない。猿吉小僧の存在はあまりにも大きすぎた。そんな人間を手厚く葬るなんてことは出来ない。
『先に帰って報告書を作成しておく』
「あぁ、頼んだ」
『……なぁ、土方』
「あ?」
『俺が死んだら山に撒いといて』
「…………は?」
突然のことに驚いた土方は吸っていた煙草をぽとりと地面に落す。
『墓なんて狭いところじゃなくて、山の方が広々としてていいなぁと』
「お前なにふざけたこと言ってやがる!」
『全くもってふざけてない』
「馬鹿なこと言ってねぇで早く屯所戻れ!」
『はいはい』
怒鳴り散らす土方に苦笑いを残してパトカーへと乗り込む。
『ふざけてねぇよ。墓なんて大層なもん。俺には似合わねぇよ』
自分が存在していたという記録が未来に残されるのは嫌だ。出来ることなら形が残らないようにしたい。
『なんて言ったらどっかの銀髪がキレ散らかしそうだな……』
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