第239幕
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『随分と世話になってるみたいだな、近藤さん』
「えっ!?海!?なんでここに……!?」
『ふらふらしてるから何してるんだと思ってね』
近藤が出てきたのは町外れにある民家。栄えている中心部から離れたここは貧しい人達が身を寄せあって暮らしている。
そんな場所に盗人の家はあった。
「海!頼む、この事は……」
『自分の立場をわかった上での言葉か?』
「ぐっ……」
『まさか真選組局長ともあろう男が盗人と仲良くしてた、なんてな』
「別に仲良くしてたわけじゃッ」
『動物園で一緒に逃げ回ってた癖にか?』
「あれは仕方なくしてたの!」
『あとで土方に謝っておいた方がいいよ。アイツキレてるから』
二回も石を投げつけられた挙句、手榴弾の餌食にまでなってしまった土方はズタボロである。
病院へと向かうまでの間、土方はひたすら「クソゴリラがッ!!」とブチ切れていたので、きっと謝ったくらいでは許されないと思うが。
「す、すまん……お前たちに迷惑かけたな」
『別に仕事をしたまでだ。"動物園に入り込んだ侵入者はこちらで捕まえた"』
「え?」
『もう不法侵入なんてするなよ。後処理めんどくせぇんだから』
通報を受けたのだからその後の結果報告もしなくてはならない。犯人を取り逃したなんてことになれば、動物園の管理者からクレームが来る可能性がある。
だが、今回は侵入者が誰だか分かっているし、こうして警告しておけばまた入り込むこともないだろう。実質、犯人を捕まえたようなものだから管理者には捕まえたと報告した。
「海……お前……」
『俺はもう帰るから』
「あ、ああ……」
戸惑う近藤に背を向けて屯所へと歩き出す。
道中、子供のはしゃぎ声が聞こえて足を止めた。明かりがついている民家から見えたのは両手にバナナを持って喜んでいる子供の姿。
「お母さん!またバナナもらえたよ!」
「良かったわねぇ。大切に食べましょうね」
「うん!お母さん、半分こしよう?」
無邪気にはしゃぐ子供は何も知らないだろう。
『知らない方が幸せとも言えるのか』
なんとも言えない感情が蠢く中、嬉しそうにバナナを頬張っている子供から目を逸らし足早にその場を去った。
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