第237幕
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『やっぱめんどくさい事になったじゃねぇか』
「うん。そうなんだけどね?そうなんだけど……お前どこまでそれ持ってくつもりなの?」
海の手の中にあるのは居酒屋でひたすら注文していたイカ焼き。店を出ようとしたときに店主に渡されたものだ。何度も頼んでいたせいでお気に入りになったのだと誤解されていた。
『焼きそば食ってる途中で引っ張り出されたんだから少しくらい良いだろ』
袋から串を引っ張り出すと美味しそうな匂いが辺りに漂う。
「だからって今食う事はねぇだろ」
『腹減ってるんだよ。朝からまともに食ってなかったから』
「飯はちゃんと食べなさい!」
『お前が言うか。万年金欠野郎が』
いつも卵かけご飯で済ませてるような人間が人の食事にいちゃもんつけられるのか。
なんなら銀時よりちゃんとしたものをいつも食べている。たまたま今日は忙しくて食事が取れなかっただけであって毎日食べていないわけではない。
『それよりどうすんだよ。辰馬人質に取られてるんじゃないのか』
居酒屋に来たのは快援隊の一人。
好き勝手にやってた罰として辰馬を海に流していたのだが、辰馬が誰かに拾われた。その相手は昔、陸奥が奴隷船にいた時に関わっていたやつら。
「構わん。役立たずを消すチャンスぜよ。撃てー!」
辰馬がいるというのに陸奥は容赦なく相手の船に攻撃を仕掛ける。
『流石の辰馬も無事では済まないんじゃないか?』
「さ、さぁ……自業自得といえばそうなるんだろうけど……」
『これで頭のネジが全部しまればいいけれど』
「無理じゃね?むしろネジ全部吹き飛びそうじゃん」
こちらに向かって叫んでいる辰馬の声を聞きつつ海はイカ焼きへと手を伸ばす。
「早くそれ食べ終わりなさい。どうせ行かされるんだから」
『めんどくせ』
「その気持ちはわかるけども」
深いため息をついている銀時の口目掛けてイカ焼きの串を突きつけた。
「むぐっ!?」
『さてと……回収しに行くか』
「ちょ、なんなのお前!」
『お前だって何も食べてないだろ。酒ばっか飲んでたら腎臓悪くするぞ』
「え、心配してくれてんの?でも、もうちょっと優しい心配の仕方してくれない!?」
『優しいだろうが。糖分三十パーセントくらいの』
「百パーでお願いします!!」
「痴話喧嘩は他所でやれ」
ガシッと銀時の襟を掴んだ陸奥は海へと身を投げ出す。船から落ちる瞬間、伸ばされた手に向けて海は無意識に手を伸ばしていた。
『あそこまで……泳ぐのか……』
「海!こっちこっち!」
『お前は何してんだよ』
共に海に落ちた銀時は陸奥の道中合羽を掴んでいて、自分で泳ごうという気はない。
「あそこまで泳げるわけねぇだろうが!服着てるし酒飲んでるし!」
『それは陸奥も同じだろ。情けない』
「ちょっと前まで泳げなかったやつに言われたくないんだけど!?」
『今は泳げてるから問題ない』
目指すは辰馬がいる船。そこまで体力がもつようにと海はゆっくりと泳ぎ始めた。
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