第232幕
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「ああ……来ないな土方さん」
「もう二十分も遅刻だぞ」
「マズイんじゃねーの?局中法度"理由のいかんに関わらず集合に遅れる者は士道不覚悟で切腹"そう決めたのは誰でもない……副長だぜ」
朝の定例会議。まとめた資料に目を落としていた海は隊士たちの声で顔を上げた。まだ会議が始まらないのかと思えば、なんと副長である土方がまだこの場に来ていないではないか。
「ちょ、海!トシの様子見てきて!」
『なんで俺が』
「お願い!もう待てないって!」
必死な顔で近藤に懇願されては仕方ない。
深くため息を零してから立ち上がり、海はそっと会議室から出た。
『自分で決めた約束事も守れねぇのかあいつは』
グチグチと文句を吐き捨てながら副長室へと赴く。襖を大胆に開け放ち、中にいる人物へと声をかける。
『おい。いつまで部屋にいるつもりだ。会議始まってるだろうが…………あ?』
「なんだよ……まだ八時だろうが……」
寝巻き姿で枕を抱えている土方が欠伸を噛み殺している。まだ寝足りないというように寝転んで布団を頭まで被って。
『何ふざけたこと言ってんだよ……お前、ダラけすぎだろうが!!!』
掛け布団を引っペ返して土方の頭をわし掴む。力任せに頭を掴めば、土方も段々と目が覚めてきたのか驚いた顔で海の手を振り払った。
「なに!?なんでここにいんの!?」
『てめぇが会議に顔出さねぇからわざわざ来てやったんだろうが!』
「会議?なんのこと?俺知らないんだけど!?」
『はぁ?お前まだ寝ぼけてんのかよ』
「いや、本当に知らないんだって…………あっ、今俺、マヨラーだったわ」
『はぁ……お前さっきからなんなの?』
相手をするのが疲れる。昨日まではこんなじゃなかった。それがなんで突然こんなふうになったんだ。
『お前、土方だよな?まさかあのオタクのほうじゃねえよな?』
「え?あー、土方であって土方じゃないけど」
『意味わかんねぇ。日本語で話せ』
「日本語だろうが!てか、海……なにそのくま」
土方の手が伸びてきたかと思えば、目元を指先で撫でられる。
『いつもの事だろうが。書類が終わらなかったんだよ』
「いつも徹夜してんの?」
『は?そんなのお前知って──』
「寝なさい。今すぐ」
グイッと腕を引っ張られ、先程まで土方が寝ていた布団へと今度は海が寝転ぶ。何が起きたのか分からず、戸惑っている間に上着が剥ぎ取られ、スカーフが外された。
「寝ろ。そんな顔でふらふらすんな」
『これから会議があるって言ってんだろうが!』
「そんなもん後でいいだろ。今は黙って寝なさい!」
違う。全然違う。
目の前の男は土方であって、土方じゃない。
「お休み、海」
『おま……ぎん……』
頭を撫でる手が、優しく海を見つめる目が。土方とは全く違う。
「おやすみ」
色々と聞きたいことがあったが、海の意識は微睡みの中へと溶けていった。
.