第261幕
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その日の夕方、喜々の目に止まらぬように降りてきた船は隊服を脱いだ隊士たちを次々と乗せていった。
「そんな顔するな。俺たちは必ず江戸に戻ってくるさ」
彼らを見送る為に来ていた海と朔夜に近藤は曇りのない笑顔を向ける。
「俺たちは江戸で侍になる為に来たんだ。ここは言わば故郷みたいな場所。帰るところはここしかねぇんだからよ」
『そうだな……』
「だからそんな落ち込むことはねぇよ」
ぽんっと頭に置かれた大きな手が優しく海の頭を撫でる。今生の別れという訳でもないのに悲しさが一気に押し寄せてきて海は近藤の顔を見ることが出来なかった。
「近藤さん」
「ああ。それじゃあ俺たちは行くな」
『……どうかご無事で』
「海もな。あまり無茶するんじゃねぇぞ?」
『うん……』
土方に呼ばれて近藤は船へと歩き出す。
「兄さん……」
『二度と会えなくなるわけじゃねぇのにな』
遠くなっていく背中が段々と滲んでいく。
『またここに戻る。俺たちは……真選組は江戸を守る組織だから』
船に乗り込む彼らに向けて敬礼。流れる涙はそのままで。
『どうか……お元気で』
こちらを振り返った近藤はいつもと変わらない笑み。あの顔を当分見ることは出来ない。
上がっていく船に敬礼をし続け、その影が無くなるまで見送った。
辺りが暗くなってから近くで待っていた銀時に声をかけられて漸くその場を離れる。
「あいつ知ってたよ」
『何を?』
「海が江戸を離れないこと」
『やっぱ近藤さんには見抜かれたか』
「ゴリラだけじゃねぇよ。マヨラーの方も何となくわかってたんじゃない?」
『だから手合わせしたいなんて言い始めたのか』
「次いつまた会えるか分からないから思い出として残しておきたかったんじゃない?」
『それなんかどっちかが死ぬみたいな感じじゃねぇか』
思い出を残すだなんて大袈裟な。江戸から離れただけなのだからそんなことをしなくたっていいのに。
「分からないだろ。あいつらを殺すために刺客が向けられるかもしれない。互いに無事で居られる保証はないんだからさ」
『確かに……な』
言われてみればそうだ。京へと移動した茂茂は殺された。江戸から離れれば安全なんて確証はどこにも無い。喜々は自分の視界に入る恐れがある者は徹底的に潰しにかかるはず。
「そうならないように海のことは守るけどね」
自信ありげに笑う銀時に口元が緩む。
『自分の身くらい自分で守る。と言いたいところだが、近藤さんから依頼受けてるんだっけか?』
「そうそう。報酬貰うためにはしっかり仕事しねぇと」
『それなら頑張ってもらうとするかな。これから忙しくなるから』
「……えっ」
『当たり前だろ?全部一から始めなきゃなんねぇんだから。幕府の情報網が使えないのであれば自分たちで探し出さなきゃなんねぇんだよ。その為には……とある場所に行かねぇと』
「とある場所……って?」
『それは後でのお楽しみ』
「どこに行かされんの!?」
『さぁな』
横でどこに行くんだとしつこく聞いてくる銀時を無視してスタスタと歩く。まずは潜伏先を探すところから始めなければ。万事屋に入ることが出来ないのであれば別のところに住まなくてはならない。新八の家だって監視が付けられるだろうし、下手に町にいたらそれこそ危ない。
『これから大変だな』
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