第261幕
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「話し合いしてたんじゃねぇのかよ。なにやってんのこいつらは」
のんびりと団子を食べていた銀時の耳に入ったのは鋭い金属音。なにやら外が騒がしいと思って出てみたら庭で海と土方がやり合っているではないか。
縁側であぐらをかいている近藤の隣に腰を下ろして気だるげに目の前のやり取りを眺めた。
「トシが海とやりたいって言い出してな」
「やりたい?お前らそんなことやってる暇あんのかよ」
彼らはもう江戸を離れる準備をし始めなくてはならない。それなのに土方は海との手合わせを望んだと言う。
「万事屋、海は江戸を離れる気はないんだろう?」
「どこまで聞いたんだ」
「おふくろさんの墓参りに行くってのは聞いた。その後で俺たちの合流するとは言ってたが……ありゃなんか隠してるな」
銀時たちに話した内容の半分は近藤たちに言ったらしい。奈落との関係性についてのことは一切口にしてないのだろう。
「合流するって言ってんだからそうするんじゃねぇの?」
「だといいんだがな。素直に俺たちのところに来てくれるってんなら心配は要らねぇが……あの感じはそうじゃねぇな」
隠したつもりでも見破られてしまっている。きっと目の前でやり合っている男も近藤と同じく気づいてしまったのかもしれない。
「万事屋」
「なに」
「海のことを頼む」
「なんだよ急に」
「あいつは俺らとは一緒に来ないだろう。その理由はきっと聞いてもはぐらかされる。手を貸してやりたいとは思うが、俺たちはもう江戸を立たねばならん。そうなったら頼れるのはお前らしかいないんだ」
だから海のことを守ってやってくれ。そう言って近藤は銀時に頭を下げる。頼まれることには慣れてはいるが、この男に頭を下げられるのはなんだかむず痒い。
「言われなくても海の事は守る。こっちに居続けるのは危ないと思ったらお前たちのところに行かせるつもりだ」
「海が大人しく来ると思うか?」
「文句言われても連れていく」
本人だって分かっているはずだ。江戸に残ることがどれだけ危険かを。
「江戸に残るって言われた時は嬉しいと思ったけど、今の状況じゃアイツにとってここはもう安全な場所じゃねぇんだよ。海のことは必ず守るけど、アイツでさえ勝てないようなやつに俺がかなうわけないだろ」
立ちはだかる敵は必ずと言っていいほど倒してきた。海と協力してやっとの奴らもざらにいたのだ。同じ人間同士ならなんとかなるものでも、天人相手になってしまえば力不足でこちらが倒れてしまうこともある。
「(守りたいって思っててもアイツの方が強いからいつも守られてんのは俺の方なんだよな)」
だから海に何かあった時。それは銀時でも手こずる相手だということ。そんな相手に目をつけられたとなれば一溜りもない。
例え海が望む結果を得られなかったとしても危険が及ぶ前にここから離れさせる。暫くは会えないかもしれないけど、海が無事でいてくれるならそのくらいの寂しさは我慢出来る。何年と会えずにいた日々を過ごしてきたのだ。これくらいあの日々に比べたらマシなほう。
『これでスッキリしたか?』
海の声が聞こえて銀時は下げていた目を上げる。
尻もちをついている土方の首元に向けられている剣先。汗だくな土方に対して海は涼し気な顔をしている。
「……参った」
『ん。怪我してないか?』
「してねぇ」
座り込んでいる土方に手を貸して立ち上がらせ、砂埃の付いたズボンを手で払う。まるで子供が汚した服を綺麗にする母親のようだ。
『銀時?いつの間に来てたんだ?』
「ついさっき。なんか騒がしかったから見に来た」
ちょいちょいと手招きすればこちらへとやってくる。なに?と首を傾げながら目の前にやってきた海を引き寄せて自分の足の上に乗せた。
「真選組局長からお前の護衛の依頼を承ったから。よろしく」
『護衛?』
「そ。江戸にいる間は万事屋総出でお前の身の安全を確保するから」
『何でそうなった』
「海が一人で動くのは危ねぇと思ってな!」
へらへら笑う近藤を海はじとりと見る。その様子を土方がなんとも言えない顔で見ているのに気づいて銀時は苦笑いを浮かべた。
「(お前も側に居たかったのね)」
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