第261幕
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「あいつらから聞いてるとは思うが、俺たちは江戸を離れようと思ってる」
『さっき新八から聞いた。その件なんだが、俺はこっちに残ろうと思う』
「は?お前、ここに残るってどういう意味だ。江戸に居れば将軍の目に付くことになる。俺たちがどう思われてんのかは分かってるだろ」
『分かってる。だから目立つ行動はしないように気をつける』
「何でこっちに残るんだ?何かやり残したことでもあるのか?」
近藤たちになんて説明すればいいのやら。自分の母親が奈落と関係があると佐々木に言われたからそれを調べに行くなんて正直に言えばきっと心配されるに違いない。
『あー……それはだな』
話すべきか否か。
「誤魔化してないで言え。ここに残る理由はなんだ」
不思議そうにしている近藤とは違い何故か土方は怒っている。なんでそんな責められなきゃなんないだと思いつつ、ここは仕方ないと諦めた。
『母親の墓参りに行ってくる。墓がある所は分かってるんだが、場所を詳しく知らないから調べる必要があるんだよ』
「おふくろさんの墓がこっちにあるのか。それなら今すぐ離れちまったら出来ないもんな」
『西ノ宮から墓の場所は聞いてたけど、今まで忘れててさ。江戸を離れるならこれを機にと思って』
母親の墓参りに行くのは本当のこと。でも江戸を離れるかどうかまではまだ決めていない。もし奈落との関係があるようであればそれについても調べるつもりだ。そうなったら益々江戸から離れることが出来なくなるだろう。
「お前一人で行くのか」
『いや、朔夜も連れてく。あと銀時も』
「それなら──」
「そうか。万事屋がいるなら安心だな!」
土方の言葉を遮るように近藤が声を被せる。ちらりと不服そうに土方は近藤を横目で見たが、本人は気にせず豪快に笑っていた。
「後から合流するってことでいいんだな?」
『ああ。終わったらすぐに合流する』
朔夜だけだが。とは言わずに頷く。土方からじっと見つめられたが海は無視した。
「俺たちの方は気にしなくていいから。おふくろさんとゆっくり話をしておいで」
『道中気をつけてな。組織を立て直している最中とはいえ喜々は近藤さんたちの首を狙ってるんだから』
「それは海も同じだろう。気をつけて行くんだぞ?」
『分かってる』
それから逃亡ルートの話になり、合流出来そうな場所や潜伏先の話し合いをした。どうやら桂が裏で手助けをしてくれるらしく、喜々の目を掻い潜って逃げる手はずは十分に整っている。あとは近藤たちが江戸を離れるだけ。
「海」
『どうした?』
部屋を出ようとした所を土方に引き止められる。腕を組んで何かを考え込んでいた土方はそっと顔を上げた。
「少し付き合え」
そう言って土方は刀を手にして立ち上がる。
『稽古に付き合えって?』
「それくらいの時間はあるだろ」
『この状況で、とは言わない方が良さそうだな』
思い悩んでいる顔をしているのだ。考え込むより身体を動かしてスッキリさせたいのだろう。
『竹刀なんて無いから真剣になるけどいいか?』
「ああ、そのつもりだ」
『そう。怪我しない程度にな』
最初から本気でぶつかり合うつもりでいる。
『(江戸を離れるのが不安なのか、それともまた別の悩みか。よく分かんねぇけど)』
手合わせをしたくらいでハッキリさせられるなら付き合ってやった方がいい。
刀を手にして庭の方へと出る。心配げに見てくる近藤に大丈夫だと笑いかけながら、海は刀を鞘から抜いた。
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