第261幕
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「どうしたんだ?そんな改まって」
『近藤さんと土方にはちゃんと言っておこうかと思ってさ』
和やかに話していた近藤と土方に声をかけて静かな部屋へと移動した。
『土方には言ったんだが……』
なんて切り出せば良いのか。土方に伝えた時はさらりと言えたのに近藤を前にすると言いづらい。
「言いづらいなら無理に言わなくてもいいんだぞ?」
口ごもっていた海に近藤は優しい笑みを浮かべる。その顔を見た途端、もうこれ以上隠し事をするのはダメだと思った。
『今まで黙っててすみませんでした。俺は……近藤さんに拾われたあの日、攘夷志士として戦争に参加してました』
「うん。なんとなくそうだろうなって思ってた」
『すみません』
「謝ることはねぇよ。俺も……いや、とっつぁんも知ってて黙ってたんだ」
『何で……聞かなかったんですか』
元攘夷志士が幕府の関係者になっているなんてことがバレたら直属の上司である近藤や松平は即刻処刑されたに違いない。疑惑があった時点で海を問い詰めていれば良かったのに何故そうしなかったのか。
「だって今は違うだろ?前は確かに危ねぇと思って様子見てたけど、警察として仕事をちゃんとこなしてるし、かつての仲間だったかもしれない奴らを捕まえてた。逃がしたり情報を売ってたりしたら声掛けてたけど、お前はそんなこと一切しなかったじゃねぇか」
『……隠れてやってたらどうするんですか』
「その時は俺が斬ってた。少しでも怪しい行動をしてたら……首をはねるつもりだったんだ」
『そんな甘い考えでよく今まで……』
「それくらいてめぇを信頼してたってことだ。近藤さんにお前を斬らせねぇように俺がお前を見張ってたが、全くと言っていいほどしっぽを出す素振りも見せなかったしな」
確かに土方は常に海の近くにいた。近藤が海を拾った頃から。怪しまれているのは知っていたからなるべく変な事をしないようにしていたが、それがいつからかなくなっていた。土方の鋭い視線がなくなったのはいつ頃だっただろうか。
『それならちゃんと最後まで見張ってろよ。真選組にいた間も俺は動き回ってたんだからな?』
これまで海は大胆な行動をしてきている。山崎に海の追跡をさせていればすぐに何をしていたかは分かったはず。それなのに土方は海の監視を解いてしまった。
別に見つかりたかったわけでもないけど。いつかはバレるのだという焦りと近藤たちを裏切っているという罪悪感に苛まれるのはとても辛いものだった。それならいっその事、全て知られた方が楽になれるんじゃないかと思ったこともある。そうなったら近藤たちが叱責を受けないように立ち回るつもりでいた。
それなのに。
「悪かったな。てめぇが悪巧みしてるようには見えなかったからよ」
「俺らにはなんも影響なかったからな!コソコソ動いてるなぁとは思ってたけど、真選組に害が及ぼすこともなかったし。それどころか海の評判が良くなってたからいいかなって」
『良くないですよ。なんだよ評判って。そんな噂話を信用しないでください。そんなものいくらでも作れるじゃないですか』
「噂話は作れるかもしれねぇけど、人の信頼は簡単には作れねぇよ海」
『陰で町民を脅していたらどうするんです?そうなるように仕向けていたら』
「あの人たちがそう簡単に従うと思うか?そんなことしたら町総出で海の所に怒鳴り込んでくるぞ?」
ああ……あの人たちは確かにそんな人達だ。近藤の言葉に何も言えずに黙り込んだ。
「お前がどれだけ自分自身を悪役に見立てようとしても無駄だ。お前にはそんなもん似合わねぇよ」
「海より俺たちの方が悪評酷かったよな!税金ドロボーなんて言われてよ」
「近藤さんは言われても仕方ないけどな。あんた仕事サボって女のケツ追っかけてたんだから」
「お妙さんを悪く言うな!俺はあの人を見てると元気が出るんだ」
「そっちじゃねぇよ。あんたの事を悪く言ってんだよ」
「トシだって言われてただろう!瞳孔開きすぎで怖いって!マヨネーズばっか食べてて気持ち悪いって!」
「マヨネーズが気持ち悪いは言い過ぎだろうが!!」
「マヨネーズじゃなくてトシ!トシが気持ち悪いの!」
『これ何の話ですか』
段々と脱線していく話を元に戻すべく二人の間に割って入る。どちらも聞いたことのある悪口だから訂正はしないでおくが。
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