第258幕
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「新八さん……僕あそこに入れる気しないよ」
「あんなところに入って行ったら危ないよ……朔夜くんはこっちを手伝って!」
「うん」
総悟と信女のやり取りを見て朔夜は何もかも諦めた。最初は総悟と共に信女を止めようと思っていたが、あんな戦闘狂のところに行く勇気はない。今からでも兄の後を追おうかとも考えたが、負傷している隊士や山崎を置いていく気にはなれなかった。
「そういえば坂田さんは?」
「銀さんなら奈落の人と一緒にいるはずだよ。さっきあそこで……」
新八が指さした方へと視線を向けるとそこには確かに坂田と奈落の姿があった。どちらも隙を全く見せない攻防。家でダラダラとしている時の銀時とはガラリと印象が変わる。
「みんな頑張ってるのに」
「何言ってるのさ。朔夜くんだって頑張ってるよ!怪我した俺のこと庇ってくれてるし」
「だって守らないと山崎さん死んじゃうでしょ?」
「ゔっ」
「全員で生きて帰るんだよ。じゃないと兄さんは許さないと思う」
必ず生きて帰る。海と土方にこの場を任されたのだからきちんと役目を果たさなくては。
「そうだね。その為に僕らも頑張らないと」
「新八さんは十分頑張ってるよ。山崎さんのこと担いでるんだから」
「こんなの全然だよ!神楽ちゃんなんて他の人たち守ってくれてるから」
ちらりと神楽の方へと視線を動かすと、彼女は真選組隊士と攘夷浪士たちを庇うように見廻組を蹴散らしていた。
「みんな強いんだね」
自分も強くなりたい。皆を護れるくらい強さが欲しい。
「どうやったら強くなれるんだろ」
海ほどの力があれば皆を守れる。海はどうやってあれだけの力を手に入れたのか。警察の仕事をしているだけでは手に入れられない。でも、特別何かをしているわけでもない。
海が強い理由は一体。
「……強くなるには実戦を積め。そう言ってたよね」
「朔夜くん?」
「ううん。なんでもない」
「……ねぇ、朔夜くん。強くなることだけが全てじゃないよ」
「え?」
新八の言葉に朔夜はドキッとして手が止まる。その隙を見廻組に突かれてきられそうになったが、新八が相手の頭を木刀で突いて昏倒させた。
「僕も海さんに言われたんだ。強くなるなら経験を積んだ方が早いって。でも、ただ力をつけるだけじゃダメだって。その力を何に使うかちゃんと考えろって」
「僕は……ただ、皆を守りたくて」
「うん。朔夜くんは優しいから皆を守るために力をつけたいんだよね。ならその気持ちを忘れちゃダメだよ」
「新八さん……」
「朔夜くんの方が海さんに教わってるの早いから僕なんかまだまだだけどさ。これだけは忘れずにいるんだ」
海と一緒にいる時間が長いのは朔夜の方だが、新八は海のことをよく理解している気がする。たまにこうやって海が言いそうなことを新八が言葉にしていた。今だってきっと海に注意される話題だろう。
「新八さんって兄さんのこと好きなの?」
「えっ!?なんでそうなるの!?」
「だって兄さんのことよく知ってるから」
「そ、そんな事ないよ!」
「動揺してるのが怪しい……!」
「好きとは違うよ!ただ、僕は海さんのことを……その……尊敬してて、いつか銀さんみたいに守れたらなって……」
「……新八さんが?」
「なんだよその顔!!僕だって頑張ってるんだからね!?」
別に変な顔をしたつもりはないが、新八は朔夜の顔を見てムカッとした表情を浮かべた。その怒りを襲ってくる見廻組にぶつけてからため息をついた。
「海さんを守るなんてまだまだ先の話だけどね」
「うん。無理だと思う。僕にも難しいもん」
「ほんとに。そう思うと銀さんてやっぱ凄いんだなぁ」
「……そうだね」
銀時には負けたくない。なんとなくそう思った。嫌いという訳では無いが、なんとなく気に食わない。海が危険な時に必ず助太刀に入る銀時が。ほっとした顔で銀時を見る海の姿が。
「(あんまり好きじゃないなぁ)」
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