第258幕
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『土方!前!!』
「あ?!」
銀時たちの元を離れてから海たちは森の中をひたすら走っていた。時折聞こえてくる金属音と発砲音を頼りに。
そんな海たちの前に現れたのは薄暗い森の中でも目立つ白。
『見つけた』
土方に制止の声を掛けられたが、海は足を止めることなく白の集団へと飛び込む。誰かを中心にして刀を構えていた見廻組は一人残らず血に伏せた。
『近藤さんは……』
「おいおい……こりゃ何事だ?」
『松平のおっさん?』
「海!無事かって……とっつぁん!」
「お前たちか」
見廻組に取り押さえられていたのはボロボロになった松平。頭から血を流して倒れていた松平はゆっくりと起き上がる。
『牢屋から逃げ出して来たんですか?』
「外の空気が吸いたくなっただけだ。あんなジメジメしてる空間なんかにいたら肺が腐っちまう」
『いつもタバコ吸ってる癖に。湿気よりタバコの煙で肺がやられると思うけど』
「……なんだ?いつもより口が回るじゃねぇか」
「あ、いや、それは……」
慌てる土方に松平は怪訝そうな顔を向ける。
『別に。もう何も隠すことは無いかと思ってな』
「そうかい。お前も腹ァ決めたのか」
『ああ。俺はもう迷わないよ』
松平に自分が攘夷志士だったことは言っていない。それでもたまに探るような目を向けていた。松平ほどの情報網を持ってすれば海の過去なんていくらでも調べることは出来る。きっと海が真選組になる前から。松平に呼ばれて上京してきた時から知っていたのかもしれない。
知っていて黙っていた。いつでも処理できるように手元に置いているのかと思っていたが、どれだけ日が経とうとも松平は海の事を糾弾することはなかった。それどころか悩みがあれば話を聞き、困っていたらすぐに手を貸してくれる。最初こそはそんな対応に不気味に思っていたが、今では松平が海のをずっと匿ってくれていたのだと知っている。
「大きく成長したもんだな。初めてお前を見た時はとんだ狂犬だと思ったが。今じゃ主を守る狼か」
『その例え方はよく分かんねぇけど……まぁ、そうだな。あの頃に比べたら多少はマシになったかも』
立ち上がろうとしている松平に手を差し伸べて助け起こす。
「それもこれも全部あの男のおかげってこった」
『大分世話になったよ。だからそろそろ恩を返さないと』
これくらいでは返し切れないけれど。溜まり溜まった恩義を返すタイミングは今しかない。
『松平さん、近藤さんはどこにいるんだ?』
必ず助けに行く。こんな所で死なせるわけにはいかない。あの人は必ず江戸に戻らなくてはならないのだ。近藤の居場所はこんな場所じゃない。
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