｢お前は他にやる事あるだろ｣


銀時はそう言って海に背を向ける。朧の相手は自分が引き受ける。だからお前は近藤の元へ行けと。


『銀時一人でどうにかなる相手じゃないだろ』


｢二人居たって変わりゃしねぇよ。それにアイツ一人に対して二人でやるなんてダサすぎる｣


『そんなこと言ってる場合か！あの男はここで始末しておかなければ追々邪魔になる。それならここて……』


｢ねぇ。海、お前はここに何しに来たの？｣


『何って……』


｢ここに来た目的忘れてんじゃねぇよ。お前らはゴリラを助ける為、俺らはお前らの手助けをしに来てんの。海がこんなところでグダグダしてる間にゴリラがやられたらどうするの？｣


ここに来た意味を忘れるな。銀時は有無を言わさぬ目で海に訴える。


『……近藤さんを見つけたらすぐ戻る』


｢はいはい。ほんとにお前は心配性なんだから｣


『悪いかよ。すぐに無理をするのはお互い様だろ』


｢よく分かってんじゃねぇか。ならとっとと済ませてこい。ゴリラといえどもこの状況じゃ危ないだろ｣


『コンクリートジャングルだったからな。自然に突然返されても上手く順応できないだろうし』


｢……上司の話してるんだよね？なんか本物のゴリラの話になってない？｣


口元を引き攣らせながら銀時は苦笑いを浮かべ、隣に立っている土方に向けて大丈夫なのかと問いかけるも、土方はお手上げだと言わんばかりに肩を竦めた。


｢旦那はあっち、なら俺はこっちですね｣


｢総悟が残るなら僕もここに残るよ｣


｢朔夜、お前その意味分かってるんで？｣


｢うん。あの人には以前、顎で使われたことあるし。それに兄さんのこと泣かせたから許さない｣


｢って、言ってやすけど｣


『勝手にしろ。その代わりここで死ぬことは許さないからな。必ず五体満足で戻れよ。それと泣かされてねぇから』


｢だとよ｣


｢僕聞いたよ！山崎さんから！｣


『山崎』


｢えっ！いや、だって……朔夜くんに聞かれたから……｣


ぎろりと山崎の方を睨むと、ビクッと身体を震わせながら言い訳を口にする。監察の人間なのにベラベラと余計なことを喋る口だなと嫌味たっぷりで告げると、山崎は怯えた顔ですみませんと一言漏らした。


｢土方さん、海さん。局長を……近藤さんをお願いします｣


信女と向き合っている総悟はこちらを見ずに呟く。


｢よく聞け。真選組局中法度に最後の一条を加える。今まで命を懸け守り続けてきた四十六場の法度、たとえそれら全ての禁を犯すことになろうとも……生きろ！｣


土方の言葉を合図にして全員が駆け出す。銀時は朧の元へ、総悟は信女のところへ。そして海は土方らの方へと来た敵の露払いを。


必ず全員生きてまた再会すると信じて。




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