第257幕
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『遅い』
銀時たちを見下ろしながらそっとため息をつく。ロープを垂らしてからもう十分経っているというのに誰一人として頂上までたどり着かないでいる。急げと言ったのは土方たちなのに。
『早くしろよ。この人数相手する俺の身にもなってくれ』
後方から聞こえてくる足音と殺気に海は再度ため息を吐いた。
海が崖を登っているときに見えた黒い鳥。それは海の周囲を旋回してどこかへと飛び去った。カラスを見て思い浮かぶものといったらあの男しかいない。
『登場が早くて助かるわ。こちらから探しに行かなくて済む』
こちらを見上げている銀時に早く上がれと手でジェスチャーしてから海は背を向けた。
『時間稼ぎなんて面倒な事せずともこれ全部片付けちまえばいいんじゃねぇのか?』
上から弓で銀時たちを狙おうとする奴らの首を一つずつはね落とす。下から山崎の情けない声が聞こえて地味にイラッとした。
「海ッ!!」
『騒いでないで早くしろ!』
矢の餌食になりたくなければ早く上がってこいと声をかけ、目の前の男どもを蹴散らす。斬り伏せるよりも崖から落とした方が早いと判断し、海は崖ギリギリのところに立った。
『気をつけねぇとお前ら真っ逆さまになるぜ?』
「くっ……国賊共が!」
『知ってるか?勝てば官軍、負けたら賊軍っていう言葉がある。要は勝てばいいだけの話だろ?』
なんも心配はいらない。この戦に勝てばいいのだから。近藤を無事に取り戻し、全員帰還することが出来れば。
そうなれば海たちの勝ちだ。
『だからお前たちにはここで死んでもらう。悪く思うなよ』
向かってくる奴らを薙ぎ払って落とす。ふと、頭上から視線を感じて頭を上げる。
『あいつまだ生きてるのかよ。銀時並にしぶといやつだな』
何度急所を刺しても倒れなかった男。どれだけ傷を付けても死ななかった男がそこにいる。
あれとまた対峙するとなると厄介だ。
「海!」
『遅ぇ!どれだけ時間掛けてやがる!』
「こんな崖をひょこひょこ登れんのはお前だけだから!」
漸く頂上についた銀時が文句を言いながら辺りを見渡す。
「お前……」
『来んのが遅えんだよ。あらかた片付けたがまだいる』
血にまみれた刀を振るって鞘へと戻す。驚いて固まっている銀時の首根っこを掴んで引き上げると、逆に手を掴まれた。
「怪我は」
『してない。この程度ならする理由もない』
「相変わらずのお手前で」
『舐めてんのか。それより……』
「アイツは……!」
『あの男を相手にすんのは骨が折れる。あんな不死身みたいなやつ二度とゴメンだと思ってたのに』
「不死身?そんなわけないだろ」
『三回』
「なに?」
『心臓に三回刺した。それなのにあんなにピンピンしてるんだぜ?』
海の言っている言葉の意味が分からないのか、銀時は訝しげな顔で首を傾げる。そりゃ信じられるはずもない。心臓を貫かれれば誰だって死ぬ。それなのにあの男は生きているのだから。
またこうして海たちの前に立ち塞がっているのだ。
『不死身としか言いようがないだろ流石に』
非科学的なものは信じない。でも、目の前に立っている男は紛れもなくあの日海と戦った男。
「そんな馬鹿げた話信じられるかよ……」
『信じられないならやってみるといいよ。俺も今でも信じたくねぇし』
こちらをじっと見つめている朧に向けて睨む。ここで仕留めなければ今後邪魔になる存在になるだろう。
『銀時、ここは俺が──』
「海」
ここに自分が残ると言おうとしたが、銀時は首を横に振って海の背中を押した。
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