第257幕
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「入るものは古今東西の極悪人。出ていく者は死人だけ。獄門島と並び地獄と称される監獄、黒縄島」
近藤たちが収監されているのはその監獄。一度入れられてしまえば二度と生きて帰ることは出来ないとされているその島は江戸から遠く離れたところにある。
「侵入するにはこれしかないでやんす」
ハジは隊士たちに囚人服を手渡して着替えるように促す。真選組の隊服で島に乗り込んだとなればすぐに来た理由を悟られてしまう。だが、囚人として捕らわれたとなれば話は別だ。
『そう簡単に行くと思うか?』
「この手しかねぇならやるしかあるめぇよ。近藤さんのためだ……つか、お前はいつまで食ってんだよ」
隊士らが着替えているのを眺めながら海はもそもそとおにぎりを食べていた。
鉄之助にもらった弁当は既に食べ終えており、これはハジが作ってくれたおにぎり。戦いに行く前に腹拵えはしといた方がいいと言って、小銭形が皆にご飯を振舞った。
自分も普通にご飯を食べようとしていたのだが、横からハジに沢山のおにぎりを渡されて今に至る。
『知らねぇよ。ちっこいのがこれ食えっつうんだから』
「お前は色んなところで大食いしてんのかよ」
『そんなわけあるか』
海が一般的な食事量では足りないことを小銭形たちは知らないはずだ。なんなら彼らに会うのも数回程しかないのだから。それなのにハジは海の為にと沢山のおにぎりを作ってくれた。
──沢山食べて大きくなれよ、カミュ。
『誰かに入れ知恵されてんな』
その誰かは考えなくても分かってしまうのが悔しいところ。
「ふ……副長!補佐!向こうの船の様子が……」
和気あいあいと話していた土方と海を隊士が切羽詰まった声で呼ぶ。彼が見ている方向には一隻の船。
『海上での確認ってやつか?』
「さあな」
ゆっくりとその船は海たちが乗っている船の真横につく。
「ハッ……舵を切れー!あの船から離れろ!」
近づいてきた船の甲板には多数の人間が倒れている。その誰もが血を流して息絶えていた。
土方が咄嗟に船を動かせと声を張るが、それを逃がすまいと相手の船から撃たれた。
『やっぱそう簡単には行かせてくれないか』
被弾して燃える船に乗り込んでこようとする人影。彼らが船に足をつける前に海は刀で振り払った。
『まったく人がまだ飯食ってるって言うのに……こんな血なまぐさいもん見ながら飯なんか食えるか』
「てめえはいつまで食ってんだ!」
『しょうがないだろ。この身体は燃費が悪いんだよ』
おにぎりをくわえながら襲ってくる輩を薙ぎ払う。辺りは黒煙で見えなくなり、他の人間らも何処にいるのかわからない状態。
『土方、離れんな』
視界が悪い上に相手は奈落ときた。いくら土方であれど、この状況は悪すぎる。
「奈落が何故ここに……!」
『大方、こちらの動きを把握してたんだろ。どこから漏れたのか……それとも監視されてたのかは知らねぇが』
あまりにもタイミングが良すぎる。これは最初から海たちの行動を知られていたはずだ。
むしろこうなる事は誰にでも予想出来たかもしれない。海たちが近藤を見捨てるはずがないから。
『クソッ……!おい、土方!』
大砲の追撃を食らって船は大きく傾く。僅かに見えていた数メートル先がまったく見えない。周りが闇に包まれたかのような中で聞こえる足音と錫杖の音。
『視界が悪い中で動けるのはお前らだけじゃねぇんだわ』
煙を斬り払うように刀を一閃。腹部から勢いよく血を吹き出しながら倒れる敵。それでもなお立ち上がろうとしたその背に容赦なく切っ先を突き刺した。
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