第256幕
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『連れてきてくれたのか?』
「まさか。自分でここに来たんだよ」
『そうか』
海が準備を終えた頃、土方が屯所の門を開けていた。その側には銀時がいて、海の姿を見つけるや否や不機嫌そうな顔をした。
「俺はてっきり落ち込んでると思ってたんだけど?なに?騙してたの?」
『騙してはいない。言ってもいないからな』
「押し入れに篭ってるのは某死神かドラえも○だけで十分です。それに隠してた刀まで持ってきやがって」
『あれで隠してたつもりか?見つけてくださいと言わんばかりの場所に置きやがって』
冷蔵庫の裏なんて誰だって見つけられる。そんなわかりやすい場所に隠すくらいなら没収なんてしなければ良かったのに。
「あれは……冷蔵庫の裏にいるヤツらを追い出すために置いてたの!」
『俺の刀をなんだと思ってるんだお前は』
ゴキブリホイホ○として使うなと怒ろうとした海の前に土方が現れる。副長の隊服に身を包んだ土方は海の服装を見て眉を寄せた。
「てめえなんで隊服を着てねぇんだよ」
『あぁ、副長さん。準備終えたみたいで?』
「……何言ってんだお前は」
『そりゃ……俺もう補佐じゃなくなるから』
その言葉に土方は目を大きく見開き、銀時はため息をついて目を伏せた。
「補佐じゃないだ?てめえ何ふざけたこと言って──」
『土方、"蒼き閃光"って名前知ってるか?』
「閃光?それは確か攘夷志士の……」
『そう。かつて戦争中に活躍してたと言われている者の二つ名。それ誰だと思うよ』
「そんなもんわかるわけ……」
『目の前にいるよ、土方』
「……は?」
『だから、俺がその閃光なんだよ。今まで黙ってて悪かったな』
こんなパパッと身を明かすことになるとは思っていなかった。もっとちゃんとした所で話すべきことなのだが、今はそんな時間は無い。他の攘夷志士と手を組む以上、彼らの統率を取れる人間が居なくてはならない。その為に海は攘夷志士たちの前で身分を明かし、彼らを率いることを選んだ。
この場所にいるのは土方にそれを伝えるため。そして副長補佐を降ろしてもらい、後で処分を受けるためである。
「お前が……攘夷志士……だと?」
『むしろ今まで気づかなかったのか?総悟の方は勘づいてたみたいだったが』
こちらをじっと見ている総悟へと視線を向けると、さっと目を逸らされる。自分は何も関係ありませんと言うように頭の後ろで手を組んで空を見上げた。
「本当に……お前が閃光なのか」
『もう騙す理由もないだろ』
最初から騙していたつもりも無かったけれど。近藤たちが海に聞かずに居てくれたから今まで言わなかっただけで、聞かれた時は素直に答えようかと思っていた。一度だけ、土方に聞かれたような気がしたが、その時ははぐらかしてしまったから。だから一番に身を明かすのは土方にしようと思って。
「……海」
『うん?』
「俺はお前が何者であっても……お前がたとえ攘夷志士であっても俺は……」
『土方』
ショックを受けて俯いている土方はブツブツと呟く。その先の言葉を言わせてはならないと海は遮った。
『お前、それは言ったらダメだろ。他の奴らに示しがつかなくなる』
土方はグッと言葉を飲み込んで海を見る。縋るような目を向けられて思わず顔を逸らしてしまった。それではいけない。ここで土方に歩み寄るような事をしてしまったら後で海を罰せなくなってしまう。
それじゃダメなのだ。
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