第256幕
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
かたんっと道場の戸が開けられて海は目を開けた。
「着替え終わりましたか?」
道場のど真ん中で正座している海に総悟は訝しげな顔を向ける。その後ろから朔夜が顔を出し、あれ?っと声を出した。
「あれっ、兄さん隊服じゃないの?」
新八を送ったそのままの足で真選組屯所へと来ていた。入口はテープを貼られていてる状態だったので、こっそりと塀を登った。
その先に居たのが総悟たちだ。土方が居ないのであれば自分たちは動けない。きっと土方は来てくれると信じて、総悟は隊士たちを屯所に集めていた。
「海さん、たった一週間で忘れたんですか?」
総悟に渡された隊服には腕を通さず、海は真選組とは何ら関係ないシャツとズボンを身につけた。
『忘れてない。でも、多分こっちの方がいいだろ』
「何がですか?」
『気分的に』
総悟は意味がわからないと首を傾げ、朔夜はその後ろでキョトンとしていた。
「海さんアンタ……」
『やる事はやる。あとの始末は全て終わってからでいいだろ』
近藤を助け出す。そこまでは手を出すことを許されるはずだ。
「……俺は海さんが誰であっても仲間だと思ってますよ」
『一番隊隊長がそんなこと言ってたら他の奴らに示しがつかねぇよ?』
「そんなの知りやせん。それに土方さんだってきっと」
『ほんとにお前らは……』
甘いというか優しすぎるというか。
その優しさに漬け込んでいた自分が言うことでもないけれど。
『総悟、朔夜』
「はい」
「はい!」
『こっから先は死にに行くようなもんだ。例え無事に近藤さんを助け出すことが出来ても、隊士たちの犠牲は避けられない』
「……はい」
『それでも行くんだな?』
近藤を助けるためにどれだけの隊士が倒れるか分からない。下手したら総悟や朔夜などの腕のたつ奴しか生き残らないかもしれないのだ。それでも隊士たちを連れて近藤の元へと行くのか。
海の問い掛けに総悟は深呼吸を挟んでから答えた。
「行きます。どれだけの仲間が死のうと、どれだけの屍を踏み越えようと俺は……俺らは近藤さんを助けに行きます」
『そうか』
ならばもう何も言うことは無い。総悟の強い決意に頷いて海は立ち上がる。
『それなら決まりだな』
外に集まっている隊士たちは海を見て一斉に敬礼をした。そんな彼らへ苦笑いを浮かべながら一言。
『それは土方が来た時にしてやれ。泣いて喜ぶんじゃねぇの?あいつ』
雨の中、隊士たちが待っていてくれたなんて知ったら号泣ものだろう。真選組はまだ潰れてなんかいない。ちゃんとここにあるって知ったら。
『はぁ……自分で決めたくせになぁ』
敬礼をする資格は自分にはもうない。海は真選組としてではなく"攘夷志士"としてここに立っているのだから。
.