第255幕
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『斎藤!新八連れて上にいけ!』
「えっ、海さん!?」
バタバタと万事屋の外階段を上がってくる足音。そして勢いよく開けられた引き戸。
斎藤が新八を連れて天井へと上がったあと、海も急いで上へと身を隠した。
「海さんなんでこんなこと」
『静かにしてろ』
僅かに開けた天井板の隙間から見えたのは見廻組。誰かを探しているのか、部屋のあちこちを見渡して舌打ちを零していた。
「誰もいません!」
「そうですか。ならば仕方ありませんね」
何人もの部下を従えてやってきたのは佐々木。のんびりとした感じで銀時の部屋と今をチェックしていた。
「ここにいると思ったんですが……どうやら勘違いのようでしたね」
「どうなされますか?」
「捜索は続けなさい。喜々公を殴った罪は重いですよ」
佐々木の言葉に新八がピシッと固まる。海もため息をつくのを我慢した。
「もしかしてと思って来てみたんですけど……どうやら期待はずれだったみたいですね」
ちらりと佐々木はテーブルを見る。そこには片付けられていない食器。
「まあ今日のところはいいでしょう。どうせ近いうちに会いますよ……桜樹さん」
佐々木の視線が下から真上へと向けられ、海は咄嗟に身を隠した。
「もしかしてバレたんじゃ……」
『いいから黙ってろ』
佐々木たちが家を出ていくのをじっと堪える。ピシャンっと引き戸が荒々しく閉められたあとも海たちは動くことなくじっとしていた。
「まさか喜々様を殴ったのって」
『銀時だろうな』
土方の様子を見に行ってくると言って出ていったはずなのに何をしているんだ。
見廻組に目をつけられたということは指名手配になっているようなもの。喜々を殴ったとなれば処刑だって免れないはず。
『新八、暫くここには顔を出すな。神楽にも伝えろ』
「は、はい」
『斎藤は先に戻っててくれ。新八を家に送ったら行くから』
静かになった部屋に降りて各自動き出す。
ことが収まるまでは万事屋には入れないだろう。必要最低限のものをまとめて新八に持たせる。元々そんなに私物が無かった部屋だ。持ち出すものなんて無いに等しいが、何も持っていかないのも寂しく感じた。
『つい先日までは江戸を護る警察だったのが、今となっては国に追われる立場か。なんだか世知辛い世の中だな』
「僕は認めてませんけどね」
『何を?』
「江戸を護っていたのは真選組です。これまでも、これからも」
強い意志で新八は呟いたあと、恥ずかしそうに頭をかいた。
『そう思ってもらえたら心残りはねぇよ』
笑いながらわしゃりと新八の頭を撫でる。今までそんなに実感は無かったが、改めてこう言われると嬉しい。自分たちがやってきたことは無意味なことではなかったのだと。
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