第255幕
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「銀ちゃん、海いらないって」
「……そうか」
近藤が捕まった翌日、真選組は解体された。隊士たちはみな散り散りになり、行くあてもなくさまよっている。
「ゴリラ……いつ帰ってくるアルか」
神楽には近藤が捕まったとしか伝えていない。だからいつか帰ってくると思っている。きちんと伝えなければならないことなのだが、海が家にいる手前、近藤の処刑を口にすることは出来なかった。
見廻組によって屯所が封鎖され、海は帰る家を失った。門扉に貼られるテープをただじっと見つめていた姿はとても痛々しく、誰も声をかけらずにいた。
"万事屋"
"……なに"
"あいつを……海を頼む"
土方は銀時に海を託して銭形の元へ、朔夜は沖田のそばに残ると言って離れていった。
「神楽、それ貸せ」
「うん」
海がご飯を食べなくなってもう一週間が経つ。ずっと銀時の寝室の押し入れに閉じこもったまま。
狭くて暗い部屋はトラウマの場所なのに海はそこに居座り続けている。
「海、いい加減飯くらい食え」
盆を持ちながら押し入れの戸を開けると、顔を隠すように体育座りしている海。
「海」
名を呼んでも海は一切返事をしない。それどころかピクリとも動かなかった。まさかと思って海の手に触れたが、ちゃんと生きている温かみがある。
「ここに置いておくから。ちゃんと食べておけよ?」
押し入れの戸は開けたままにし、盆を畳の上に置いた。このあと銀時は土方の様子を見に行く予定がある。そちらも大分やられているらしく、銭形の方から話を受けていた。
土方たちの気持ちは痛いほどわかる。だからこそ放っておけない。本当は海の側にいてやりたい。海はこの気持ちを味わうのは二回目だから。
「新八、海のこと頼む。すぐ帰ってくるつもりだけど……」
「大丈夫ですよ。何かあったらすぐ連絡しますから」
「私も定春の散歩終わったらすぐ帰るアル」
家に一人で置いていくわけにはいかず、急遽新八に留守番を頼んだ。新八も近藤が居なくなったことに違和感を感じていて、家に一人でいるのはつまらないと言った。
「行ってくる」
「はい。行ってらっしゃい」
後ろ髪引かれる思いで家を出る。下に降りてから部屋の方を見上げるが、海が顔出す気配は無い。
「すぐ、戻る」
あんな状態の海を一人にはさせられない。
ショックで押し入れの中に閉じこもってるだけならいい。何かあってもすぐそばに居るから。でも、あそこから飛び出してしまったら。
近藤を助ける為に一人で出て行ったとしたら。昔のようになる。銀時の知らない場所で沢山傷ついて、沢山人を殺して。そこで諦めたように嗤う。
そんな姿はもう見たくない。
「今は何もしないでそこに居てくれ、海」
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