第254幕
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「やめろ!海!!」
近藤の叫びにピタリと海の動きが止まる。
「お前に抜けられたら困るんだよ。誰がこの町守ってくんだ?誰がトシたちを支えていくんだ」
『そんなの俺には関係ない!』
「関係あるだろ。俺たちがずっと守ってきた町を。俺たちの仲間を。守ってやってくれ」
『そんなの……俺は……!』
「海、わがまま言ってすまねぇな」
優しく笑う近藤に海は完全に力をなくした。手にした刀を地面に落とし、震える声で近藤を呼び続ける。
その姿は松陽を連れていかれて行った時と被った。泣きながら松陽を呼び続けたが、松陽は笑ってこちらを見るだけ。銀時に海のことを託して松陽はそのまま帰らなかった。
今、それがまた目の前に行われている。また海の大切な場所が、人が失われようとしていた。
「おい……」
かつりと松葉杖をつきながら前へと出る。刃を向けられている海の前へと出て守るように立った。
「また全てを失いたくないのなら他にやる事があるんじゃない?あの男は多分知っていた。喜々公の政権下では真選組はもう長くないことを。みんなの前で自分が連行されれば間違いなく隊士たちは黙っていない。そこにいる者のように歯向かうでしょう」
銀時の背に隠されている海へとちらりと目を向けてから信女は銀時の方へと向き直る。
「だから国葬の警備につかせた。なのにアナタだけをここに呼んだ。その意味、分かっているはず」
信女はそれだけ残して近藤を連れて出ていった。そこに残された銀時は誰もいなくなった先を見つめて。
『なさい……』
ぼそりと後ろで海が呟く。痛む身体に鞭を打って振り返ると、海はボロボロ泣きながら謝っていた。
『ごめんなさい。ごめんなさい……俺が……弱いから。また守れなかった……ごめんなさい』
「海……」
『ごめんなさい……!ごめんなさい!!』
泣き崩れる海へと手を伸ばしてその身体を抱きしめる。何度も何度も謝る海にかける言葉が見つからない。いや、どんな言葉を吐いたって海には伝わらないだろう。
「(ああ、またこの子は)」
大事なものを失った。
必死に守ろうとしていたものを。松陽と同じ形で。
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