第254幕
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『あった……』
朔夜の警察手帳は洗面台のところにぽつんと置かれていた。
こんなに堂々と置かれているのに誰にも気づかれなかったのか。それとも朔夜が出た後に誰も厠に出なかったか、または"誰も手を洗わなかった"かだ。
『水道を自動にしたって手を洗わないんじゃ意味ねぇだろ』
何時だったか手を洗うか洗わないかで揉めていたことがあった。タマ菌がどうのこうのとかって土方が一人で騒ぎ散らし、厠の清掃を徹底的に見直し、水道もセンサー付きのものに切り替えた。
海自身は手を洗うのが楽になったと思っている。一々栓を洗わなくて済むから。海が言った水道費に関してはあまり変化は無かったみたいだが。
『目的の物は見つかったから戻るとするか』
今は水道のことなんてどうでもいい。茂茂の葬式はまだ時間がかかる。その間に何が起こるのか分からない。元将軍が死んだのだから喜々はもう手を出してこないと思われるが、まだ妹のそよ姫が残っている。彼女がもし婿をもらい、世継ぎを産めばその子供が次の将軍になるかもしれない。
それを阻止するためにそよ姫も手をかける可能性がある。
あの男から目を離さない方がいい。
『さて……ん?』
厠を出た時に聞こえた笑い声。耳をすまして聞いてみると、近くで近藤が誰かと話している。
近藤はたった一人屯所に残った。隊士たち全員に茂茂の葬式の警備に当たるようにと命令して。自分は合わせる顔がないんだと苦笑していた近藤に海はかける言葉が見つからなかった。
ここには近藤しかいないはず。ならば話し相手は一体誰なのか。町のやつらはみな葬儀に参列していていないはずなのに。
靴を履きに行こうとした足は逆の方へと進んでいく。徐々に大きくなっていく近藤の声と、誰かの声。
その声はとても聞きなれたもので、益々ここにいる理由が分からない。
『なんで銀時が?』
退院したばかりの身体で一体何をしているんだ。歩くのも大変でまだ松葉杖をついていたはずなのに。
見つけたら一言文句を言ってやろう。そう軽く考えながら近藤たちの方へと歩いていく。
廊下の先を曲がったところで思いがけないものを見てしまうとは知らずに。
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