第232幕
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『それで?なんでこんなビルに?』
「さぁ。攘夷浪士が居たりするんですかね」
総悟に連れてこられたのはかぶき町にある廃ビル。
土方がこのビルにひっそりと入っていくのを見回りしていた総悟が見かけた。仕事もせずにふらふらとしていると言われれば、一言文句を言いに行きたくなるもの。
『それなら一人で行くわけないだろ。何人いんのか知らねぇけど』
「土方さんならやりかねないですよ。頭ん中、マヨネーズと煙草しか詰まってなさそうなんで」
『なんとも言えない』
「どうしますか?近藤さんに連絡します?」
『必要ないだろ。土方が一人で行ったのが悪い』
何かあっても全部土方に押し付ける。そう言って海はビルの中へと踏み込んだ。
人気のないビルはとても静かで、海と総悟の靴音だけが響く。
『本当に攘夷浪士がいるのか?』
「分かりません。でも、怪しいじゃないですか。人目を避けてこんなところに入るなんて」
『確かにそうだけど……』
だとしても静かすぎる。土方が先に入って行ったのであればもう騒ぎになっていてもおかしくはない。
「海さん」
屋上へと上がる階段の途中で自分たち以外の靴音が聞こえた。足を止めて耳を澄ますと、足音は一つだけ。
「こんなこともあろうかとコレ持ってきたんですよ」
『お前がそれを使うと攘夷浪士以外も吹っ飛ぶからやめろ』
「でもこっちの方が手っ取り早いじゃないですか」
総悟が取り出したのはいつものバズーカ。そんなものどこに隠し持っていたんだと聞く前に総悟は屋上から来た人物に向かって打った。
『全部土方のせいだ』
「あれ?おかしいな……」
『今度はなんだよ』
「土方さんしかいねぇや」
『は?』
慌てて階段を駆け上がると、そこには扉のガラスに頭を突っ込んだまま動かない土方が一人。
『総悟……お前、減俸な』
「そりゃひでぇ」
『おい、土方!しっかりしろ』
「なんなの?マジなんなの?あっちもこっちも酷い目にあうじゃん!!」
全身に突き刺さっているガラスをパラパラと落としながら土方は泣きそうな声で呟く。
『なんで避けなかったんだよ。いつもの事なんだから慣れてるだろ』
「慣れてるわけねぇだろうが!なんで突然バズーカが飛んでくるわけ!?なに!?真選組は仲間に対しても牙むくの!?」
『土方……?』
くわっと目を見開いて土方は海の肩を掴んで揺さぶる。まるで初めてバズーカを浴びたかのような言い方で。
『お前どうしたんだよ』
「どうしたもこうしたも……って、え?海?」
『総悟、このバカ病院連れて行ってやれ』
「なんで俺が。海さんが連れていけばいいじゃないですか」
『俺はこれから見回りにいくんだよ』
きょとんとしている土方を総悟に託して、海は階段を降りようと一歩足を出す。見回りを終わらせたら書類が待っているのだ。土方の面倒を見ている暇は無い。
「お、俺は海と一緒に病院行きたいなぁ……なんて」
『は?』
「って言ってますけど」
ガシガシと頭を掻きながら土方は引き攣った笑みでこちらを見る。その目は期待に満ちているように見えたが、海はため息をついてからバッサリと切った。
『そんな暇は無い。勝手に行け』
それだけ残して一人、ビルを出ていった。
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