第220幕
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「悪いな海ィ。呼び出しちまってよ」
『緊急だったから仕方ないって』
「そう言ってもらえると助かるってもんよ」
早朝、松平に呼び出された海は城へと来ていた。
城を警備する兵士が減ったことにより警備体制に穴が出来たため、それを補うため新たな兵士を城に入れるという話が以前より出されていた。
今回、その兵士たちを見定めるというていで海が駆り出されている。
本来であれば近藤や土方が出てくるはずなのだが、彼らは別件で手が離せない状況。その代わりとして松平が指名したのが海だった。
『何人入れるつもりでいるんですか?』
「百人くらいは入れておきてェところだ。それでも少ないんだがよ」
兵士が減ったのは自分たちのせいでもある。定定の件の時に多数の兵士を殺してしまったから。
『(やり過ぎた、か)』
一応反省はしている。多分、死んで行った兵士たちの過半数は海のせいだから。
「海、どうした。そんな暗い顔して」
石壁にこびり付いている血痕を見つめて俯いた海に松平が心配げに声をかける。慌ててなんでもないと返せば、松平はそうかと一言。
「気にすんじゃねぇ。あれは仕方なかったんだ」
『松平さん……』
「お前だけじゃねぇよ。俺だって大砲ぶち込んでんだからよ。それで何人死んだかなんて数えてらんねぇ」
松平は海に背を向けて城を眺める。
「それにここはこんなもんじゃ済まねぇぐらい血を被ってるんだ。お前がやったこと以上にこの城は汚れてる」
『……そう、ですか』
「だからそんな顔するんじゃねぇよ」
ふっと松平はいつもの笑みを浮かべながらこちらへと振り返る。
自分のせいだけではないと松平は励ましてくれているが、それでもずしりとした重みが海の背に乗っていた。
「海、今度酒に付き合え」
『え?酒?』
「おう。将ちゃんが海と酒を酌み交わしたいって言っててよ。だから付き合え」
予定を組んだら連絡すると言って松平は新人兵士たちの元へ歩き出す。
松平に気を遣わせてしまったみたいだ。
『情けないな、俺』
この手は何度も人を殺している。業なんて数え切れないほど背負っているのに、まだこの感情には慣れない。
『それでも刀を捨てないのは意地張ってるからか』
嫌なら捨てればいい。そんなこと分かっている。でも、刀を捨てるという考えにはいたらなかった。これが無くなったら自分の存在意義がなくなってしまう気がして。
『(もう……誰も)』
殺したくはない、そう思っていても避けられない。
それが海の運命であるかのように。
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