第218幕
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「ねぇねぇ、兄さん」
『うん?』
「ここなんて書いてあるの?」
『ああ、それは……』
たまりたまった書類の整理を手伝って欲しいと朔夜に泣きつかれ、海は仕方なく書類に目を通していた。
朔夜が持ってきた書類の殆どは総悟が処理すべきもの。物書きが得意でない総悟は朔夜に全部押し付けたのだろう。
「ありがと、兄さん!」
『朔夜、次からはちゃんと断れ。これはお前がやるべきものじゃないだろうが』
「そうなんだけど……どうせ暇だからいいかなって。それに兄さんとこうして話もできるしさ!」
『暇なら別のことをしろよ』
やらなくていい仕事を抱えて頭を悩ませるのは無駄なことじゃないのか。それなら他のことを学んで知識を増やせばいいものを。
そういう意味で海は言ったのだが、朔夜は全く気づいていなかった。
「別のことって言われても思いつかないんだもん」
『趣味とかないのかよ』
「趣味……趣味?」
うーんと悩み始めたところをみると、朔夜にはこれといった趣味がないようだ。
ふと、朔夜が非番の日に何をしているのかが気になった。
海と朔夜の非番が被ることはほとんど無い。だから休みの日に朔夜が自室で何をしているのか全くしらない。
『お前休みの日何してるんだ?』
「休みの日?特に決まってないよ。この間は神楽ちゃんと駄菓子屋さんに行ってきた!」
『その前は?』
「その前は新八さんと万事屋の掃除した」
『……その前は』
「えっと……部屋でごろごろしてたかなぁ」
別に休みの日に何をしようが勝手だ。海が口出しするべきことでは無いと分かっている。
分かってはいるのだが……。
『お前、万事屋に行き過ぎじゃないか?』
神楽と新八しか友達がいないのかこいつは。
「行っちゃダメだった?」
『そういうわけじゃねぇけど……あいつら以外に友達はいないのか?』
「うん。中々できないんだよね」
真選組に身を置いてるせいで友人が増やせないのかもしれない。それか万事屋に行くのが癖になっていて、別の場所へ行こうと思わないのか。
どちらにせよ、朔夜が趣味を持つためのきっかけとなるようなものはどこにも無い。毎日同じことの繰り返しをしている中で見つけろというのは酷な話だ。
ここは兄として何とかしてやらなければ。
『朔夜、これ終わったら少し出かけるぞ』
「どこに行くの?」
外出と聞いて朔夜は目を輝かせる。そういえば朔夜と出かけるのは何ヶ月ぶりだろう。
『決めてない。適当にふらっと』
「いいよ!兄さんと一緒ならどこでも楽しいから!」
忙しい忙しいといって朔夜を放置しすぎていたかもしれない。少しの外出でこんなにも喜ばれるとは思わなかった。それほど朔夜は誰かと遊んで欲しかったのか。
『(用意してもらうか)』
携帯を取り出して山崎へとメールを送る。返信はすぐに来て、頼んだことを快く引き受けてくれるそうだ。
ならば早くこの書類をどうにかしなくては。残り数枚となった紙へと手を伸ばし、パラパラとめくって内容を確認していく。
全ての書類を確認し終えたのはそれから三十分後のことだった。
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